ネットの影響で芸術作品のパクリ問題が深刻化、大学などが取り組む不正防止策は?

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

芸大もパクリには敏感

 最近は、画像でパクリが発覚する事例も増えているという。

「文章と比べると画像の検索は難しいのですが、検索方法の多様化も進んでおり、バレるケースが増えています。もともと大学は、学問の自由の名のもとに自分たちの領域さえ守れればいいという風潮があったため、研究不正などがあったとしてもそこまで大事には考えていなかったようです。しかし、近年はネットの時代になってきてそうも言っていられなくなり、第三者から見てパクリを否定できるような、ある程度の客観性が求められるようになってきたのだと思います」

 たとえば、ネット上のマイナーなサイトで偶然見つけたイラストを、少しデフォルメして自分の作品として世に出したとする(先述した銭湯絵師のケースもこれに近い)。しかし、そういった作品の中には、Google画像検索をちょっとしただけで簡単にネタ元がバレてしまうケースも少なくない。

 こうした時代の中、教育・研究の現場は、研究不正対策に取り組んでいる。まずは学問の世界だ。藤本氏によれば、平成20年代から、ネット情報からのコピペ論文などの研究不正が発覚し、博士号が取り消される不祥事が相次いだという。

「文科省は14年、『研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン』を発表。ここで言う不正というのは、文科省の定義では『捏造』『改ざん』『盗用』の3つです。これを機に、各大学は研究者倫理ガイドラインを作り、今では研究不正をすると最悪解雇されます。学生の研究不正は教員の責任と見なされるようになってきており、大学院の修士論文だと剽窃チェックツールが使われています」

 文科省の決定を受け、芸大でも研究不正の対策が講じられるようになった。

「美大の研究不正は、作品の制作に対する不正行為となります。たとえば、東京藝術大学には『東京藝術大学における研究活動の不正行為等に関する取扱規則』と『東京藝術大学研究者倫理に関するガイドライン』があります。成果発表に際しては捏造・改ざん・盗用を行ってはならないとか、先行事例を精査して研究に寄与した先行研究は適切に引用するということが書かれており、学生も対象となります」

 つまり、学問や芸術の教育・研究現場では、形式上はすでに著作権などの対策がなされているのだ。

次ページ:元ネタへのリスペクトが大切

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。