ネットの影響で芸術作品のパクリ問題が深刻化、大学などが取り組む不正防止策は?

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 2019年8月、京都造形芸術大学が「京都芸術大学」に改称すると発表した。すると翌月、「京都市立芸術大学」が同大に対し、新名称を使わないようにと大阪地裁に提訴した。京都芸術大学と京都市立芸術大学、誰がどう聞いても確かに紛らわしい名前で、訴えた理由も分からなくはない。学生に教える学校でこうなのだから、アーティストの間で“パクリ”が横行するのはあたりまえ……なんて声も。近年、芸術界では“パクリ”が多数発覚しているという。『パクリの技法』(オーム社)などの著作があるメディア学者で、東洋大学教授の藤本貴之氏に、その理由について聞いた。

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 芸術作品のパクリ疑惑といえば、15年に発覚した、多摩美術大学教授の佐野研二郎氏による「2020年夏季オリンピック東京大会・パラリンピック東京大会」の公式エンブレムの騒動が思い起こされる。

 また今年3月には、商品PRイベントのライブペインティングで、美人銭湯絵師の勝海麻衣氏が描いた虎の絵が、他のイラストレーターの作品と酷似していたことが発覚。所属事務所の社長と勝海氏は謝罪文を発表し、「著作権等の理解が足らず、悪意なく制作に至ってしまった」などと弁明した。

 こうした近年のパクリ問題は、学校現場でも散見されるようになり、大学が不正対策を講じるようにもなっている(後述)。その理由について、藤本氏はこう説明する。

「パクると言えば簡単に聞こえますが、これまではそれなりの努力が必要でした。市販の本からパクるとすぐにバレてしまうので、うかつにはできません。そこで、一般の人が手に取らないようなマニアックな本から引っ張ってきていたわけです。しかし、ネット時代になって状況が一変。なかなか普通の人がアクセスしないような情報を見つけると、制作者は自分だけが宝の山を発見したような錯覚に陥ってしまうようです。本来、ネットの世界では、自分がその情報に到達できたということは、理論的には世界中誰もが到達できるということでもあるわけですけどね」

 本や雑誌からではなく、ネットからはどんどんパクるというケースはたびたび見られる。Wikipediaをコピペしたような“記事”を、あなたも目にしたことがあるはずだ。

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