「滝沢カレン」ヘンテコ日本語の奥深さ、息の長いバラエティタレントになったワケ

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「おバカキャラ」とも違う

 滝沢はいつも真面目で誠実だ。その証拠に、彼女はあまり愛想笑いをしない。自分が話したことで共演者にツッコミを入れられたり笑われたりすると、それにつられて照れたような笑みを浮かべたりすることはあるが、話す前や話している途中に自分から不安そうな様子を見せることはない。

 彼女自身はあくまでも、自分のボキャブラリーの中で、言いたいことを誠実に伝えようとしている。ただ、言葉の使い方や組み合わせ方があまりにも独特であるために、違和感を与えてしまうことがあるだけだ。

 例えば、滝沢は鶏ガラスープをすくっている映像を見て「入浴剤を入れたようなお湯」と表現したことがある。彼女はそれが何のスープであるか分からなかったため、自分なりにその液体の見た目の印象をそのまま表現しようとしたのだ。

 もちろん、鶏ガラスープを「入浴剤」で例えるのは、日本語の使い方としては不適切かもしれない。だが、本人はきちんと伝えたいという一心でその言葉をひねり出している。

 この誠実さこそが、滝沢のヘンテコ日本語の生命線となる部分だ。彼女が自分の話すことを一種の「ギャグ」や「ネタ」のように考えていたとしたら、こういう態度は取れないだろうし、ここまで人気が続くこともなかっただろう。滝沢が必死で伝えようとしているのが見えるからこそ、視聴者は微笑ましさを感じつつ、彼女を支持したくなるのだ。

 その点で、滝沢はいわゆる「おバカキャラ」とも違う。いわゆる学校で学ぶような知識は足りないかもしれないが、彼女には彼女なりの思考力があり、思ったことをきちんと伝えようとする知的な誠実さがある。ヘンテコ日本語の奥に隠された真面目さと素直さこそが、彼女の人気の秘密なのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月28日掲載

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