オンワード、不採算600店舗閉店の真相 百貨店アパレルの終焉へ……

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 10月3日付けの日本経済新聞が報じた「オンワード、600店閉鎖」の記事を、一般紙が後追い。「オンワードHDの今期、240億円の最終赤字に下方修正」(産経新聞電子版:10月3日付)、「オンワード数百店閉鎖 ブランド低迷、11年ぶり赤字へ」(朝日新聞電子版:10月4日付)……。なんだか、老舗アパレル企業の経営が、相当悪化しているみたい。

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 米国の「FOREVER 21(フォーエバー・トゥエンティーワン)」が日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の申請を検討していると報じられたのは8月末のことだった。同社から日本事業撤退が告知されたのは9月25日だった。

 現在、日本の店舗では“完全閉店セール”が開催されている。同社のホームページにはこうある。

〈いつもFOREVER 21をご利用いただき、ありがとうございます。誠に勝手ながら2019年10月末日をもって、FOREVER 21日本国内の全店舗を閉店し、また、同日までにEコマース事業についても閉鎖する運びとなりました。長らくのご愛顧ありがとうございました。〉

 あっけない幕切れである。

 そこへ降って沸いたのが、株式会社オンワードホールディングスの赤字報道だ。「23区」や「組曲」、「五大陸」といった数多の自社ブランドに加え、「ポール・スミス」や「カルバン・クライン」などのライセンスブランドや、ドイツのファスト・ファッション「ジル・サンダー」の日本法人の管理を行うなど手広く展開する、日本のアパレル大手である。

 そのオンワードが、不採算店舗を来年2月末までに閉店するという。国内外約3000店のうち、600店の閉店を検討しているというのだ。

 10月3日に発表された「業績予想の修正に関するお知らせ」には、55億円の純利益見込んでいた2020年2月期の連結業績予想を、240億円の赤字に修正。ただし、2560億円の年間売上は据え置きとある。売れているのに赤字とはどういうことなのか、ファッション流通コンサルタントの齊藤孝浩氏に聞いた。

「オンワードの広報は、600店舗の閉鎖については『うちから出した情報ではない』と言っているそうですが、業績予想の修正には、特別損失に約250億円を計上することが明記されています。おそらく店舗の閉鎖にかかる特別損失であり、これにより240億円の赤字に転じたと見ていいでしょう。ただし、あくまでも特別損失です。通常の売上は、2560億円もあるわけですから」

 売れているのに、250億円かけて赤字にする理由とは。

「実は日本の“百貨店アパレル”は、2015年頃に多くの店舗を閉鎖しているんです。駅ビルに出店するセレクトショップ、ユニクやZARA(ザラ)などのファストファッション、さらにECサイトなど、百貨店よりもコスパの高いお店が数多く出てきたからです。アンタイトルやタケオキクチなどのブランドを持つワールドは、15年5月に400~500店舗を閉店すると発表。ピンキー&ダイアンやナチュラルビューティーベーシックなどのTSIホールディングスも、同時期に260店舗を閉め、傘下企業の運営する11ブランドを廃止しました。何が起きたかといえば、経営者が変わったんです。ワールドは銀行から来た社長さんがリストラをはじめ、TSIも外部から招いた経営者です。ところが、オンワードと三陽商会はリストラをやらなかった。両社に共通していたのは不動産資産を持っていたことです。ある程度の赤字となっても、潤沢な不動産を処分していけば、それなりに持つという考えもあったと思います。もっとも、三陽商会は15年6月に英国バーバリーとの契約が切れ、翌16年の中期決算で15億円の赤字になると下方修正し、それ以降は希望退職者を募るなど、リストラすることになりました」

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