オンワード、不採算600店舗閉店の真相 百貨店アパレルの終焉へ……

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同じ百貨店に複数店舗

 オンワードは今年8月、南青山のあった社宅を売却(38億円)している。不動産の処分も始まり、いよいよリストラを始めるのだろうか。

「オンワードの場合は、現在、Eコマースが伸びています。そこには自信を持っているはずで、それで実店舗を閉鎖するという決断にも至ったのだと思います。同社の保元道宣社長は、元々通産官僚で、ITにも詳しい方で改革派です。とはいえ、現場の意見を聞きながら環境が整うまで、店舗閉鎖になかなか踏み切れなかったのではないでしょうか」

 600店といえばかなりの数である。大丈夫なのだろうか。

「百貨店を中心に展開していたアパレルは、百貨店側の事情で小粒のブランドを開発させてきた、という経緯があります。売り場面積の少ない店舗に合うように、規模の小さなブランドをいっぱい持っているのです。狭い店舗とはいえ店員は配置しなければならないし、1店舗当たりの売上も大きくない。そんな店舗を全国に数多く持っているのが、“百貨店アパレル”です」

 あらためてオンワードのショップを調べると、確かに多いことがわかる。現在、日本にある百貨店は、全国に二百数十店舗という。だが、百貨店中心といわれるオンワードの場合、ショップは全国に2700店舗ほどもあるのだ。つまり、同じ百貨店に複数のショップが入っていることを意味する。ブランド別ならまだしも、同じブランドで、大きいサイズを扱うショップと、小さいサイズを扱うショップが別れていたり……。

「それらもカウントすると、全部合わせて数千という店舗数になります。例えば、売り場面積は、小売りチェーンでは100~200坪、ショッピングセンターなら40坪ほどなのに対し、百貨店の売り場は15坪とか10坪程度だったりします。ですから600店閉鎖と聞くと、ものすごい数のお店がなくなるようなイメージを持たれるかもしれませんが、一般のチェーン店の閉鎖と同等に考えることはできません。東京・新宿の伊勢丹や大阪・梅田の阪急などは別として、おそらく地方で採算の取れない店舗、首都圏で同じ百貨店に複数あるような店舗を整理するのでしょう。もちろん店舗を減らせば来期の売上には響くものの、営業利益は確保できると考えているのでしょう。実は百貨店の場合、店舗の家賃は売上の35%が取られるんです。人件費もかかりますから、採算は決して良くなかったと言えます。オンラインならば、それらはかからないので、採算ははるかに良い」

 それにしても、店舗の閉鎖のために250億円もかかるのだろうか。

「どんな投資をしていたかにもよると思いますが、特にショッピングセンターの場合は、例えば5年契約で出店したお店が2年で閉店することになったら、残りの3年分の家賃に相当するほどの違約金を払わねばなりません。そういうものが多くあると思います。オンワードの場合、ショッピングセンターに出店しても、大型の器を運営するノウハウがないため、そこでも店舗は小さかった。百貨店以上に効率は悪かったと思います。それゆえ、今期は赤字でも、採算をよくすることを選んだ。22年2月に営業利益100億円という目標は、1年前倒しにして達成するとのことですので、勝算はあるのだと思います」

 懸念材料はないのだろうか。

「大変なのは、店舗でずっと働いてきたスタッフさんの行き場でしょうね。オンライン事業に回ってもらうつもりでしょうが、それが上手くいくかどうか。百貨店アパレルのような歴史ある企業は、社員の高齢化が進んでいますからね」

 これも時代の流れか。

週刊新潮WEB取材班

2019年10月11日掲載

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