サイゼリヤはイタリア人も好き!?【ヤマザキマリ×マキタスポーツ対談】

食・暮らし 2019年10月5日掲載

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 イタリアに暮らし始めて35年、胃袋で世界とつながった経験を美味しく綴った『パスタぎらい』(新潮新書)が好評発売中のヤマザキマリさん。大流行した「10分どん兵衛」など、独特の方法で“食”を追求している、自称「食にスケベ」なマキタスポーツさん。いわゆる“グルメ”ではないマンガ家と芸人が、それぞれの経験をもとに、味覚のふしぎな嗜好性や驚くほどの多様性、「食通」への違和感などをたっぷり語ります。

山梨は日本のイタリア!?

マキタ 『パスタぎらい』面白かったです。僕もよく食べ物について書いたり、話したりしますが、何をどのように語るか、なかなか難しいジャンルですよね。でも、ヤマザキさんのこの本は、読んですぐにこの人とは肌というか舌が合うなと思いました。

ヤマザキ ありがとうございます。長くイタリアに住んだ経験をもとに書くとなると、「イタリア料理がいかにすばらしいか」とか薀蓄を求められがちですが、そんなことを書くつもりは最初から全くなくて。あげく、タイトルは『パスタぎらい』という(笑)

マキタ 「イタ飯」は、今でも日本では特別な料理と思われていますからね。

ヤマザキ 食に限らず、いまだに私は「日本のイタリア」に適応できていない、というか違和感があるんです。イタリア料理の日本人スタッフが「ペルファヴォーレ!」なんて言っているのを聞くと「うん?」と思うし、クルクルとグラスを回してワインの香りをうっとりと嗅ぐなんて、イタリアの、少なくとも私の周りではしている人を見たことがありません。普段は、近所の酒屋にあるワイン樽から自前の瓶に直接注いで持って帰り、コップに注いで、うまい、うまいとガブガブ飲むだけ。産地がどこかもわからない。

マキタ それ山梨と一緒ですよ(笑)。山梨は国産ワインの発祥地で、子供の時によく大人が飲んでいるのを見ていましたが、みんな一升瓶にワインを入れてました。それもグラスじゃなくて、湯呑み茶碗で飲む。

ヤマザキ イタリアもそんな感じです。

マキタ 凄い。イタリアと山梨がつながっちゃった。

「サイゼリヤ」はイタリア人も満足!?

ヤマザキ そもそもイタリアのレストランは、オシャレして行くようなところは都市の一部にしかなくて、たいていは家族や友人とワイワイしながら行くところ。

マキタ 家族でサイゼリヤに行くようなものですか?

ヤマザキ そうそう。日本に旅行したイタリア人に「何が美味しかった?」と聞くと、多くの人が「イタリア料理」と真顔で答えますからね。サイゼリヤにも、きっと満足するはず。

マキタ それって、もし僕がイタリアに行ったとして、一番美味しかったものは「吉野家」や「てんや」だったと答える、みたいなものですよね?

ヤマザキ 近いですね。富士そばとかね。だから、間違いなく日本人は器用なんですよ。外来の食文化をカスタマイズして、かつ、本場の人間にも好まれる味にしちゃうという意味でも。

マキタ サイゼリヤがイタリア人にも喜ばれるだろうというのは、ありがたいけど少し複雑ですね。僕は「真イカのパプリカソース」が好きだったのですが、最近になってメニューから消えちゃったんです。イカの漁獲高が減ったのがその理由らしいのですが、それが残念で。とはいえ、僕はイカ自体には興味がない。

ヤマザキ えっ?

マキタ パプリカソースに用があるんです。僕は「タレ」全般に目がなくて。イカは家族に食べさせて、残ったパプリカソースを再利用する。

ヤマザキ リサイクル(笑)

マキタ はい。パンにつけて食べたり、他の料理に少しかけてみたり。ソースを全部きれいに片づけないと気が済まない。

ヤマザキ まるでイタリア人ですね。イタリアの血でも流れているんじゃないですか(笑)

マキタ だからでしょうか(笑)。たしかに映画の「ゴッドファーザー」を観ていても、グッと来るのはアメリカではなく、ドン・コルレオーネの故郷であるシチリア島のシーン。生まれ故郷の山梨を想起させるんですよ。僕が育ったのはブドウ棚がいっぱいある地域で、その風景とシチリアの田園風景が脳内でつながっちゃう。

ヤマザキ あの映画であの場面を気に入るということは、やはり前世はイタリア人だったかもしれませんね。

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