「大迫傑」「設楽悠太」が火花を散らす 五輪選考「MGC」の行方

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 来年の東京五輪のマラソン代表選手を決める「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が今月15日に行われる。これまでの複雑な選考基準を改め、一発勝負で代表を決めようという初の試みだが、果たして展望やいかに。

「マラソンの五輪代表選考は揉めに揉めてきた歴史があります」

 と、解説するのはスポーツ紙の陸上担当記者。

「たとえば1992年のバルセロナ五輪の選考では、世界選手権4位の有森裕子と大阪国際2位の松野明美のどちらを選ぶかなかなか決まらず、松野が“私を選んでください”と悲痛な会見をしたものの落選。経験豊富でもタイムでは負けていた有森が選ばれました」

 さらに、2004年のアテネ五輪の代表選考では、

「男子は当時の日本記録保持者だった高岡寿成が代表落ちし、女子は00年シドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子を抑え、大阪国際で優勝した坂本直子が選ばれました。高岡も高橋も経験豊富だっただけに、有森と同じ選考基準なら代表に選ばれていてもおかしくなかった。すっきりしない後味を残しました」(同)

 このような“不透明感のある選考”は長年、選手らの不興を買っており、事実、68年のメキシコシティー五輪で銀メダルを獲得した君原健二氏でさえも、

「私の現役時代はレース数が少なかったから良かったものの、90年代に入ってからはスポンサーの関係もあってか、大会が増えすぎて代表の選考もややこしくなってしまいました。だからこそ、今回のようなトップクラスの選手を一度に集めて代表を選ぶのは、非常に分かりやすくていい仕組みだと思います」

 と、来たるMGCを好意的に評価するのだ。

 なお、レースは明治神宮外苑発着で、東京五輪で走るコースとほぼ同じ。男子31名、女子12名が出場予定で、男女とも上位2名までが代表内定となる。

鍵は暑さ対策

 先の陸上担当記者が語る。

「各選手がMGCに照準を合わせて調整してきますから、かなりのタイムが出るかもしれません。なかでも注目は男子で、日本記録保持者の大迫傑(すぐる)選手と、昨年の東京マラソンで日本人1位となった設楽(したら)悠太選手の2人が“本命”です。中盤以降に自分から仕掛けていくことの多い設楽選手と、後方に位置しながらも終盤からジワジワと追い上げていく大迫選手の駆け引きが見ものになる。それに加えて、昨年の福岡国際を制した服部勇馬選手も有力候補といえるでしょう」

 とはいえ、一発勝負に番狂わせはつきもの。『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』の著者でスポーツライターの酒井政人氏はこう予測する。

「確かに、走力的には大迫、設楽両選手が抜きん出ていますが、ほとんどの選手が経験したことのない残暑厳しい季節のレースです。そのため、直射日光を含めた“暑さ”にどう対応していくかが一つのポイントになってくると思います」

 その上で、

「昨年8月にジャカルタで行われたアジア大会で金メダルを獲った井上大仁(ひろと)選手は、蒸し暑い中でのレースを経験し、結果も残しています。こうした自信は大きいし、他の選手に比べれば暑さ対策も充分にできているはずです。大迫選手や設楽選手がバテて失速する中、井上選手が颯爽と追い抜いていくなんてことも有り得るのではないでしょうか」

 勝負は時の運といえども、まさに“お天道様を味方につけた”選手だけが栄光の切符を手にできるわけだ。

週刊新潮 2019年9月19日号掲載

ワイド特集「人生のバランスシート」より

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