今や「吉野家」のメニュー数は松屋、すき家と互角 3社を比較して判明した“意外な数字”

ビジネス 企業・業界 2019年9月5日掲載

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牛丼屋なのに“脱牛丼”!?

 87、95、93という3つの数字がある。「これは吉野家、松屋、すき家で注文できる料理とドリンクの品数だ」と言えば、びっくりする方もおられるだろう。ちなみに季節限定商品は割愛している。近年、“牛丼屋のファミレス化”は進む一方なのだ。

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 先日、久しぶりに吉野家へ行ったという50代の男性会社員が「店内でメニューを見て驚きました」と振り返る。

「吉野家ですから、メニューといっても牛丼か牛皿の2択。それに卵をつけるかつけないかぐらいという古いイメージが残っていたんですね。松屋は昔からサービスで味噌汁が出され、定食やカレーに力を入れていました。しかし吉野家は、ストイックなラインナップだったはずです。ところがメニューを見ると、吉野家でも定食やカレーを出していて、牛丼以外にもこんなにたくさんあるのかと驚きました」

 会社員が懐かしむ「昔の牛丼屋」のメニューも、個人店なら未だに存続している。秋葉原に店を構える牛丼専門サンボは「ヘッドフォン着用禁止」など複数の店内ルールがあることから「一見客の入りにくい牛丼店」としても有名だ。

 このサンボだが、入口近くの壁にメニューを看板で掲示している。ネット上にアップされている写真を見ると――並や大盛というサイズを抜きにして――「牛丼」(480円)、「お皿(ご飯付)」(530円)、「牛皿(ご飯付)」(730円)、「みそ汁」(60円)、「玉子」(60円)と5品しかない。

 ちなみに「牛皿」と「お皿」の違いが気になった方もおられるだろう。附記しておけば、前者は基本的に牛肉だけであり、後者は豆腐やしらたきも入っている。いずれにしても40代以上の方なら、「これこそが牛丼屋のメニューだよなあ」と懐かしい気持ちになるかもしれない。

 一方の大手3社は、あの吉野家でさえ80品を超えているわけだ。常連客でも「そんなに品数豊富だっけ?」と首を傾げるかもしれない。では3社の公式サイトに掲載されているメニューから、「他社が販売していない独自商品」をピックアップしてみよう。

 まず吉野家のサイトで「牛丼」のカテゴリーをクリックすると、4商品が表示される。そのうち「牛丼」(352円)と「ねぎ玉牛丼」(454円)の2つはオーソドックスな印象だが、残り2つは「ライザップ牛サラダ」(500円)と「サラシア牛丼」(445円)という“新顔”だ。(編集部註:今後、特別の断り書きがなければ、価格は税抜で、丼の場合は並盛)

 丼のメニューで「牛サラダ」というのも矛盾しているが、つまりは健康志向の時代なのだ。炭水化物は敵なのだろう。「サラシア牛丼」も、公式サイトは「血糖値の上昇をおだやかにするサラシノールを配合。血糖値が気になる方はぜひ!」とPRしている。

 吉野家のメニューを吟味すると、鰻重に相当な力を入れていることが分かる。すき家の鰻メニューも印象が強いが、こちらは期間限定。対する吉野家は通年で販売している。それだけ看板商品にしたいのだろう。

 公式サイトを見ると、「鰻重」(788円:一枚盛)を筆頭に4商品が表示される。最高価格は「鰻重みそ汁牛小鉢セット」の1000円。牛丼チェーン店としては、相当な高価格商品と言えるはずだ。

 松屋の独自商品は「ハンバーグ」。意外に感じる人もおられるだろう。吉野家はともかく、すき家もハンバーグを販売していても不思議はない気がするからだ。しかし実際は、松屋の独壇場となっている。

 松屋の公式サイトから、ハンバーグを使った主な商品をご紹介しよう。「ハンバーグカレー」(590円)、「ブラウンソースハンバーグ定食」(590円)、「うまトマハンバーグ定食」(630円)――という顔ぶれになる。

 更に関西圏や愛知県、石川県、福岡県など、東京以西の12府県での限定商品として、うどんも4種類が販売されている。松屋の公式サイトで筆頭に紹介されているのは「ぶっかけ肉おろしうどん」(430円)だ。

 そして最後に登場となった、すき家の傾向を一言でまとめれば、「丼に対するこだわり」だろうか。具体的には「鉄火丼」(680円)と「まぐろたたき丼」(580円)が目を惹くほか、牛丼のトッピングメニューに力を入れていることが分かる。

 こちらも主なものを引用すると、「高菜明太マヨ牛丼」(480円)、「わさび山かけ牛丼」(同)、「かつぶしオクラ牛丼」(同)という顔ぶれになる。

 また、先に松屋は一部店舗でうどんを販売しているとご紹介したが、すき家は全店で「ロカボ牛麺(冷・温)」(490円)をメニューに加えている。低糖質の「こんにゃく麺」を使っているのがセールスポイントだ。

 駆け足で3社の独自メニューをチェックしてみた。外食産業を担当する記者に「牛丼屋のファミレス化が進む理由」を解説してもらおう。

「背景にあるのが、少子高齢化と人件費や原材料費の上昇です。今も主力商品は牛丼です。ところが『早くて安い牛丼』では、高齢化による顧客減少やコスト上昇に対応できないのです。生き残るためには客単価を上げるしかない。単なる値上げなら顧客は離れる。牛丼に変わる“高付加価値で高価格”の商品を定番化させたいと、各社がしのぎを削っており、そのためにメニューの数が膨れあがっているのです」

 それでは大手3社は、どれくらい牛丼に力を入れ、どれくらい牛丼以外の商品を拡充しているのか、具体的に見てみたい。それには3社の「牛丼」や「カレー」、「定食」といったカテゴリーの占める割合を計算すればいいだろう。

 例えば、ある店が100品をメニューに載せているとして、そのうちの99品が餃子なら、その店は餃子に力を入れていることが分かるわけだ。しかし今回のように牛丼チェーン店が対象の場合、品数で計算すると誤解が生じる恐れがある。

 具体的に計算してみよう。吉野家の総メニュー87品のうち、カテゴリー「サイドメニュー」は24品に達し、全体の27・5%を占める。だが、その平均価格は132・6円だ。とても吉野家の経営を支える価格帯ではない。

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