安心安全な「パン」の正しい選び方 中韓よりゆるい日本の「トランス脂肪酸」規制

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パン1個あたり含有量ランキング

 同じく無添加パンの製造・販売を行っている「味輝」の荒木和樹社長が言う。

「油脂はふっくら、ふわふわの食感を出すために使っていますので、柔らかい食感が強ければ強いほどトランス脂肪酸の値が高い傾向にあります。デニッシュやパイがそれで、普通のパンが生地全体の重量の2~3%の油脂を混ぜているのに対し、これらは20%近く混ぜているのではないでしょうか。メロンパンもサクサクして柔らかいクッキー生地を作るために、油脂が必要。トランス脂肪酸が多めになる傾向にあります」

 他方、フランスパンやライ麦パンなどパサパサした食感のパンにはそれが少ない。

 掲載の表(1)は、前回挙げた107商品についてパンの種類別に平均値を出し、順位付けしたもの。なるほど、確かに、柔らかい歯触りのパンが上位に来ている感がある。こうした傾向も、「おいしいパン生活」の参考にしてみてはいかがだろうか。

 また、表(2)は、パン製造業者の業界団体「日本パン工業会」が調査した各パンの種類のトランス脂肪酸量のうち、最大値が0・5グラムを超えたパンの一覧表である。こちらも一つの参考にしていただきたい。

 前回取り上げた各店にも見解を聞いてみた。

「当社では十数年前から、トランス脂肪酸の低減に取り組んでおり、現在では5分の1から20分の1レベルまでの低減化が図られてきています。今後も更なる低減化に向け取り組んでまいります」(ヴィ・ド・フランス)

「原料の見直しに取り組み、パンや菓子に使用する油脂を、トランス脂肪酸の含有量が少ないものに順次切り替え、現在も取り組みを継続しています」(敷島製パン)

「製造工場で使用しているフライ油や原材料をトランス脂肪酸が低減された油脂に変更し、低減の取組みを進めて参りました」(セブン&アイ・ホールディングス)

 他も概ね、同様の回答。各社とも低減の努力を進めているのは事実であろう。しかし、『トランス脂肪酸から子どもを守る』著者で、杏林予防医学研究所の山田豊文所長が、

「世界の潮流は、トランス脂肪酸の制限ではなく、根絶に向かっている」

 と言うように、WHOは昨年、2023年までにトランス脂肪酸を排除することを目指すと宣言。そのための六つのアクションを公表した。また、アメリカやカナダでも昨年、事実上、「水素添加油脂」の食品への使用禁止ともいえる措置を取っている。デンマークやスイス、オーストリア、シンガポール、台湾、タイなど、規制措置を実施している国は少なくない。

 他方の日本は、「平均摂取量が少ない」ことを理由に、規制どころか食品への含有量の表示義務すらない有様。これは韓国や中国、香港の取り組みより“ゆるい”のだ。

 どの道に進むかは各人の選択次第。

 しかし、トランス脂肪酸について、ますます自己防衛の必要性が高まっているのは紛れもない事実である。

週刊新潮 2019年6月6日号掲載

特集「WHOが警告! 悪玉コレステロールの心筋梗塞リスク! 食べてはいけない有名ベーカリー『パン』の危険物質」より

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