輸出規制に文在寅は打つ手なし、日本を非難するほど半導体は「韓国離れ」の皮肉
韓国は八方塞がりだ。半導体素材の輸出管理を強化する日本への対抗策が見当たらない。日本を非難するほどに自身の地政学リスクを浮き彫りにしてしまい、半導体産業の顧客離れを加速する。韓国観察者の鈴置高史氏が対話形式でその七転八倒ぶりを解き明かす。
速報「日本は軍事大国化を夢見ている」と敵視 韓国・次期大統領候補“超リベラル政治家”の恐るべき正体
「米国を脅すな」
鈴置: 日本との紛争に困惑した文在寅(ムン・ジェイン)政権は米国に助けを求めました。まずは7月10日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官がポンペオ(Mike Pompeo)国務長官に電話したのですが、相手にされませんでした。
それどころか、韓国が逃げ回ってきた「インド太平洋戦略」――中国包囲網への参加を念押しされてしまいました(「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」参照)。
そこで韓国政府は揺さぶりに出ました。7月18日、青瓦台(大統領府)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について「状況によっては(延長を)再検討する可能性がある」と述べたのです。
GSOMIAは米国が苦労して日韓に結ばせた経緯があります。それを壊すぞと脅すことで、米国の仲裁を引き出す作戦でした。
しかし同じ7月18日、米国務省は自身が運営する放送局、VOA(アメリカの声)を通じ、「日韓GSOMIAの延長を支持する」と表明したのです。
「米国務省『日韓GSOMIAを全面支持』…非核化の重要な手段」(韓国語版)です。要は「つまらない小技を使って米国を脅すな」と韓国を叱りつけたわけです。
突き放したトランプ
トランプ大統領も韓国には極めて冷淡でした。翌7月19日、記者から「日韓間の緊張」に関し聞かれると、以下のように答えました。ホワイトハウスのサイトから一部を引用します。
・In fact, the President of Korea asked me if I could get involved. I said, “How many things do I have to get involved in?” I’m involved with North Korea — on helping. You know, I’m involved in so many different things.
仲介を頼んできた韓国の大統領に対し「いったいどれだけ私が仲介せねばならぬというのか?北朝鮮でも仲介し、助けているというのに。そうだろ、私は実に様々のことに巻き込まれているのだ」と言った――とトランプ大統領は明かしました。「これ以上、面倒をかけないでくれ」と韓国を突き放したのです。
さらに「日韓双方が望むのなら仲介する。しかしそれでは私は日韓の仲介に専念することになってしまう」とも語りました。原文は以下です。
・So maybe if they would both want me to, I’ll be. It’s like I’m — it’s like a full-time job getting involved between Japan and South Korea.
日本は仲介を望んでいないので「双方が望むのなら」とは「仲介する気がない」との意思表示です。さらに「そんな時間はない」とも言い足して、拒否の姿勢を明確にしたのです。
なお、文在寅大統領から直接頼まれた可能性は極めて低い。最後の米韓首脳会談は6月30日でしたがこの時、韓国政府は日本が半導体素材の輸出管理強化に動くとは考えてもいなかったと見られるからです。
「嘘を書くな」と怒る読者
――トランプ発言を韓国紙はどう書いたのでしょうか。
鈴置: 「双方が望むのなら仲介する」という部分だけを取り出して、トランプの介入があるかのように報じました。政府に近い左派系紙のハンギョレは、その前提で社説まで書きました。
「安倍政権は韓日関係・東アジアの平和を重く受け止めよ」(7月22日、日本語版)で以下のように現状を説明しています。
・ドナルド・トランプ米国大統領が一昨日、「韓日首脳が望むなら」という条件を付けながらも、介入の可能性を示唆したのも、韓日関係が単に両国の問題にとどまらないことを示している。
保守系紙の朝鮮日報も同じ手口を使いました。「トランプ『文大統領が韓日関係への関与を要請…両国が望めば役割果たす』」(7月20日、韓国語版)では「いったいどれだけ私が仲介せねばならぬというのか?」などの否定的な部分を全く引用しなかったのです。
この記事で面白いのは、読者がコメント欄で「嘘を書くな」と朝鮮日報を厳しく批判したことです。次です。
・VOAにはこのニュースが出ている。朝鮮日報はまた歪曲報道している。(トランプ大統領は)「北朝鮮問題にも私は介入して解決に努めている。この問題までも介入せよと言うのか?(中略)」とインタビューに答えているのだ。
確かに、VOAは「トランプ大統領『文・韓国大統領が韓日葛藤に関与を要請…2国間で解決を希望』」(7月20日、韓国語版)で、この問答を報じています。
見出しには「2国間で解決しろ」とのトランプ発言をとっています。記事にも「要請に応え仲介に乗り出す」とのニュアンスは全くありません。
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