韓国で有名大学のマスコット犬が出入り業者の晩飯に…犬肉食の最新事情を探る

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犬肉食を巡る法の死角

 4月25日にはまた、韓国の首都圏・京畿道の道庁で犬を巡る衝突が起きた。食用犬飼育業者などの業界団体関係者約800人が抗議デモを行った上、庁舎に押し入ろうとして入り口のガラスを割る騒ぎに発展したのだ。京畿道では昨年11月から動物虐待に関する取り締まりを強化し、今年3月には犬の食肉加工業者2人が摘発された。業界団体はこれに強く反発し、「全国150万の関連業者を不当に犯罪者扱いしている」「犬の食肉処理は合法」と主張を繰り広げたわけだ。

 この衝突の裏には、犬肉食を巡る韓国の曖昧な法制度がある。

 韓国では犬が畜産法で家畜に分類され、食用を目的とした飼育が可能だ。だが食肉処理業者を管理する畜産物衛生管理法では、犬が除外されている。そのため食用に飼育した犬を無許可で食肉処理しても、これらの法律には違反しない。例えば冒頭で触れたカムスニは、A氏が実質的な飼い主だった。したがって食用の家畜として飼っていたとすれば、A氏がカムスニを殺して食べても罪に問われない可能性が高い。だが一方で動物保護法は、犬を保護されるべきペットに位置づけてもいる。上述した京畿道の取り締まりは、この動物保護法に基づいて行われた。

 韓国の犬肉食は早い時期から国際社会の非難を浴び、政府は1988年のソウル五輪などで規制に苦慮してきた経緯がある。そうしたなかで生まれたこの法の死角が、犬肉食の伝統を延命させてきた。

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