北朝鮮が韓国に“仲介者失格”の烙印 それでも文在寅が続ける猿芝居の限界が来た

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「存在感の誇示」が裏目に

 文在寅政権が「タブー」を冒して「完全な非核化」という単語を使い始めたのは、実質的な首脳会談を2分間にされるなど、米国から相手にされなくなったからと思われる。米国から無視されれば「仲介者」のフリはもうできない。

 ことにG20サミットを控え、保守系紙は「外交の大失敗」に焦点を当てた。朝鮮日報の社説の見出しは「韓国を除外して展開するG20の合従連衡」(6月28日、韓国語版)だった。

 だからこそ、文在寅政権は6大通信社との書面インタビューを企画し、存在感を示そうとした。だが、それが完全な裏目に出てしまった。北朝鮮を怒らせた結果、「蚊帳の外」認定を受けてしまったのだ。

 6大通信社との書面インタビューによる「裏目」はもう1つあった。質問の1つが「2018年の欧州訪問の際、『北朝鮮の非核化が後戻りできない段階に来たら、対北制裁の緩和が必要だ』と(大統領は)発言したが、『後戻りできない段階』とは何か」だった。

 これに対し文在寅大統領は「プルトニウムの再処理施設とウラン濃縮施設を含む寧辺(ニョンビョン)の核施設全てが検証下で全面的に、完全に廃棄されれば『後戻りできない段階』と評価できる」と答えた。

 「寧辺の核施設だけを廃棄すれば、制裁を緩和すべきだ」と主張したのだ。核施設は他にも多々あり、米国はそれらの廃棄も強力に要求している。2月の米朝首脳会談が物別れに終わったのも、そのためだ。

 韓国政府は「完全な非核化」と言いながら「不完全な非核化」で手を打とうとしていると見なされても仕方がない。今度は米国が怒った。

ますます墓穴を掘る文政権

 東亜日報の「『寧辺の廃棄が後戻りできない非核化?』 文大統領の発言に米政府に懸念の声」(6月28日、日本語版)によると、ホワイトハウスの関係者は「(米国は文在寅大統領と)考えが同じでない」と不快感を示したという。

 それを見て、青瓦台(韓国大統領府)は「後戻りできない段階に入る入口」という意味だった、と苦しい釈明をする羽目に陥った。

 文在寅政権は「完全な非核化」という言葉で米国に忖度する一方、「寧辺の廃棄だけで後戻りできない非核化と見なす」との発言で北朝鮮に忖度した。だが、そんな小手先のごまかしによって、ますます墓穴を掘った。

 文在寅大統領の「存在感のなさ」のもう1つの象徴が、安倍晋三首相との会談が不発に終わったことだった(「日米中ロの首脳をストーカーする文在寅、韓国国民の前で虚妄の〝外交大国〟を演出」参照)。

 いわゆる「徴用工」判決やレーダー照射などで「卑日」に精を出す韓国。そのうえ、北朝鮮の核武装も幇助するのだから、日本が首脳会談に応じないのは当然だ。

 だが、G20主催国の日本が韓国との首脳会談を実施しないことはあり得ない、となぜか韓国は思い込み、国民にもそう説明していた。それだけに首脳会談が開けないことが分かると、韓国人はしょげかえった。

首脳夫人の会談には成功?

 6月28日、青瓦台は「文大統領の夫人と安倍首相の夫人の会談」写真を公開した。聯合ニュースの「金正淑女史、G20の茶話会で安倍首相夫人の昭恵女史と会った」(6月28日、韓国語版)で見ることができる。

「会った」といっても配偶者ツアーで一緒になったに過ぎない。だが、国民が感じる「疎外感」を癒すには、こんな写真まで見せて「首脳夫人の会談は実現した」と言い張るしかなかったのだ。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年6月29日掲載

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