“危険すぎる火遊び”で私立中学退学は違法の判決、裁判長、おかしくないですか?

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エアーサロンパス

 2人の生徒は、いったいどんな火遊びをしたのか。

「友人と2人で、ライターでティッシュペーパーに火をつけてブンブン振り回したそうです。その結果、友人の髪の毛を焦がしていますよ」

 と、解説するのは学園側の代理人である大室征男弁護士。

「それだけではありません。コーラ缶の上にエアーサロンパスを噴射したところをライターで点火しているんです。何故コーラ缶の上なのか理由はわかりませんが、ガスバーナーで燃やしたようなものですよ。ボウと燃えて、床を焦がしたのですが、コーラ缶のあったところだけが焦げずに丸く残っています。少年たちの火遊びは2日に1回とか3日に1回という具合に、1週間以上に渡ってティッシュを燃やしたりエアーサロンパスに点火したりを何度も繰り返していたのです」

 さる法曹関係者もこう語る。

「地裁の判決では、この火遊びでは、“燃焼の蓋然性がない”としています。床を焦がしておきながら燃焼の危険性がないなんてありえません。ガスバーナーみたいに燃やしているんですよ。こんなバカなことをやって火事にならなかったのが不思議なくらいです。燃焼の蓋然性がないなんてよく言えたものですよ。生徒たちが退学になったのはやむを得ないでしょう。裁判官も何を考えているのやら……」

 斎藤憲次裁判長が司法試験に合格したのは、1988年10月。裁判官になったのは91年、仙台地裁判事補が最初だった。その後、東京地裁判事補などを経て、01年に東京地裁判事、02年広島地裁判事、04年広島高裁判事、06年奈良地家裁判事、09年水戸地家裁土浦支部判事、12年東京高裁判事、15年千葉地家裁木更津支部長と異動し、川越支部に異動したのは昨年の4月だった。

 水戸地裁土浦支部時代の09年5月には、こんな判決も下している。隣家の夫婦に向かって10年間怒鳴り続け、名誉棄損で訴えられた主婦に対し、「ほぼ連日に渡り閑静な住宅地で、怒りにまかせて被害者を口汚くののしるなどしてわめき散らし、その執拗さは常軌を逸して悪質」として、懲役1年、保護観察付き執行猶予3年(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

 何故、今回は過激な“火遊び”を退学処分の理由にはならないとしたのか。

 義務教育となる公立の中学の生徒は退学させられないことになっているが、私立の中学の生徒は、退学は可能だ。

 学校教育法施行規則の第26条3項には、
1性行不良で改善の見込みがないと認められる者
2学力劣等で成業の見込みがないと認められる者
3正当の理由がなくて出席常でない者
4学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本文に反した者

 と4つの項目があり、そのうちいずれかに該当すれば退学させることができるようになっている。

 今回の生徒は、4に該当したわけだが、判決では、「生徒に改善の見込みがなく退学処分がやむを得ない、とまでは認められない」と判断した。

「判決では、生徒の反省の気持ちを重視しています。中学3年を退学させると、将来の芽をつぶすというわけですが、これでは、15歳で退学をさせてはいけない、ということにつながりかねません。今回のケースでは、他の生徒の生命に危険を及ぼす行為ですから、退学はやむをえない。見解の相違ですね」(先の大室弁護士)

 生徒の改善を重視するのか、学校の安全性を重視するのか、どちらが重要かは自明の理である。

週刊新潮WEB取材班

2019年6月27日掲載

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