川崎20人殺傷事件、立川志らくの「一人で死んでくれ」は正論か暴論か

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「自殺や犯罪のトリガーになりかねない」という反論

 一方、生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとプラス」の藤田孝典代表理事はこう反論する。

「この事件には僕も怒りを感じますし、遺族がそういった発言をしても全く問題ないと思うんです。ただ、第三者がテレビやネットで怒りの感情を発信することは世の中に憎悪をぶちまけるのと同じで、第二、第三の凶行を呼ぶ危険性がある。社会から孤立し、恨みを抱いている人たちに“一人で死んでくれ”と言い放つことは自殺や犯罪のトリガーになりかねません」

 藤田氏の言葉の裏には苦い経験があった。生活保護バッシングの嵐が吹き荒れた2012年頃の話だ。

「当時、30代の男性受給者の相談を受けていたのですが、ネット上の“生活保護なんて怠けてるだけ”“生きてる資格がない”といった過激な書き込みに悩んだ末、彼は自殺してしまったんです。今回、事件の一報を耳にして“僕らの相談者と同じ境遇にある人物の犯行だな”と確信しました。社会から孤立する人の数を考えれば、いつどこで起きてもおかしくなかった事件です。だからこそ、僕は“一人で死んでくれ”に対する反論をSNSで発信した。僕の意見に賛同する声のなかには“自分も岩崎になるところだった”という切実な反応もありました」

 事件自体の衝撃も相まって、一過性の「炎上」騒動とは一線を画す議論百出の様相を呈しているのだ。

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