古墳「世界遺産」登録で大阪はホンマに儲かりまっか?

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 大阪府にある百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群がユネスコの諮問機関によって世界遺産登録の勧告を受けたのは今月14日の未明のことであった。

「これによって、今年夏の世界遺産登録はほぼ確実となりました。6年越しの夢がかなった格好で、地元は歓喜に沸いていた」(全国紙記者)

 とはいえ、観光地としての人気を維持するのは茨の道だといい、

「例えば、文化遺産として先輩にあたる群馬県の富岡製糸場は2014年に世界遺産に登録され、一大ブームを巻き起こしました。結果、その年の観光客数は前年度の4倍以上、130万人を突破したのです。ところが、そこからは下降の一途を辿り、今ではピーク時の半分以下、50万人前後にまで落ち込んでしまった」(同)

 もちろん、富岡製糸場も減り続ける入場者数にただ手を拱いていたわけではない。市の担当者によれば、

「私たちも、世界遺産登録のブームが未来永劫続くとは思っていませんでした。ただ、建物の保存や修理にかかる費用は入場料収入で賄わなければならず、入場者数の減少に歯止めをかける必要があった。50万人前後という現在の入場者数をキープできれば、この課題はクリアできるんです」

 そこで肝になるのは、遺産の“活用”だといい、

「世界遺産の場合、保存と観光のバランスをどうとるかというのは、大きな問題です。その点、現在、文化庁は保存や修理を行った施設を、価値を損なわないよう“活用”するという方針にシフトしている。うちも、このゴールデンウィーク前に社宅群の一つが保存修理を終え、新たに展示・体験施設としてオープンしましたし、来年には国宝でもある西置繭所(にしおきまゆじょ)が多目的ホールを備えた施設としてお披露目できる予定です」(同)

 もっとも、大阪の古墳群が直面する問題はブームの一過性だけではない。

「最大規模の仁徳天皇陵を始め、古墳の多くは宮内庁の所管。地元自治体が自由に“活用”することはできません。さらに、古墳といえど、地上から見ればただの森ですから見せ方も難しいんですよ」(先の記者)

 ところが、そこは転んでもタダでは起きないナニワ人たちである。

「仁徳天皇陵に隣接する公園にある博物館で古墳を上空から眺めるVR体験ができるようになっているんです。かつては熱気球を飛ばす案や、公園に50メートルの塔を建てるなんてアイデアも叫ばれていましたね」(同)

 たくましいその商魂も世界遺産に……。

週刊新潮 2019年5月30日号掲載

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