「AI将棋の申し子」豊島将之と藤井聡太、どっちが強い?

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藤井君の方が強い

 日本将棋連盟の森下卓常務理事も指摘する。

「AI将棋を使いこなすのが彼の強みだと思います。率直に言って将棋ソフトは強い。野球でいえば200キロの剛速球のような感覚です。また、ある局面で打った手が良いのか、悪いのか、検証することも可能です。それが豊島さんの結果につながっているのでしょう」

 まさにAI将棋の申し子。とはいえ、彼の背後には同じ愛知出身の藤井聡太七段が控えている。

「本人は“藤井君の将棋に刺激を受けている”と話しています」(茂長さん)

 これまで、豊島名人と藤井七段は公式、非公式合わせて3回対戦している。結果は豊島名人の2勝ではあるが、昨年末に行われた対局は藤井七段が勝利。実力が拮抗しているのか。

「藤井さんが奨励会にいた小学6年生の頃、師匠の杉本昌隆八段が豊島さんに指導対局を頼んだことがありました。その時は豊島さんが勝利したものの、“自分が奨励会にいた時より藤井君の方が強い”と話していたそうです」

 先の松本氏はそんな逸話を披露した上で、

「藤井さんはAI将棋を活用する一方で、詰将棋を解くなどのオールドスタイルで強くなっています。いま、豊島さんに七番勝負で挑戦すれば、最終戦までもつれこむ実力伯仲の戦いになるかもしれない。全棋士が出場する朝日杯を2連覇していますし、トップ棋士と遜色ないくらいに強い。羽生善治さんのように圧倒的実力を身に付け、タイトルを席巻する可能性だってあります」

 と、言うのだが、さらに先を見据えると、

「今後、幼少期からAI将棋を活用した世代が登場することになる。その結果、藤井さんや豊島さんよりもはるかに強い棋士が現れることもありうるでしょう」(同)

 そうした未来について、森下常務理事は言う。

「AI通りの手をAIの代わりに打つプロの試合が面白いのか、とも思います。勝つために仕方ないとはいえ、ファンや将棋関係者から見れば寂しいですよ」

 AIにヒトが飲みこまれる日――。棋界も時代の流れには抗えないのである。

週刊新潮 2019年5月30日号掲載

ワイド特集「スターの代償」より

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