仮想通貨「マウントゴックス事件」で逮捕 カルプレス氏が語るゴーン容疑者との格差

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ゴーンとの扱いの差

 こうして日本の表舞台にふたたび現れたカルプレス氏だが、実は、母国フランスでは、ひと足先にメディアに登場し、話題を呼んでいた。昨年、カルプレス氏を主人公にしたドキュメンタリー映画『BITCOIN BIG BANG』が、仏有料テレビ局「CANAL+」で放送されたのだ。

 広告コピーは“Genie du mal ou Victime innocent?…(悪の天才? それとも無罪の犠牲者?)”。母や友人、弁護士らへのインタビューから構成され、カルプレス氏の人物像に迫ると同時に、事件を多角的に検証していた。

「この放送後から、温かい励ましの言葉をフランス内外からもらうようになりました。なかでも忘れられないのは、マウント社の顧客のひとりだった男性からのメールです。破綻直後、彼は怒りにかられ、ネット掲示板に〈Karples!I will steal and cook your fucking cat!(カルプレス! お前のクソ猫を盗んで、料理で始末してやる!)〉と書き込んだそう。その後、ドキュメンタリーを見て考え直してくれたのでしょう。〈ごめんなさい。頭にきてあんなことを書いてしまいました。猫を食べるつもりはありません〉と私のもとへメールが。〈許します〉と返信したら〈ありがとう〉と。その後もやりとりは何回か続きました」

 年が明けた今年1月には、今度は国営放送の「France2」が、カルプレス氏への単独インタビューを敢行した。こちらは、日本の拘置所生活がいかにひどいものだったか、に焦点を置いた内容だ。“7平方メートル未満の独房”がいかに劣悪な環境であったか、他の囚人との接触が禁じられた環境はいかに孤独だったか――。番組の取材に応じたカルプレス氏の口からは、拘置所生活への不満が次々と飛び出す(動画がFrance2のサイトで公開中だ http://u0u1.net/8V2C)。

 もっとも「France2」の企画の背景には、カルプレス氏同様“日本で拘束されたフランス人”のニュースの影響が大きい。そう、日産のカルロス・ゴーン氏である。当時、ゴーン氏の長期勾留が、フランスから非難の対象となっていたのはご存知のとおりだ。

「ゴーンさんのときは、フランスのマクロン大統領は安倍首相に“勾留が長くないか?”と話題にしてくれた。でも、僕のことは話題にしてくれない。同じフランス人としては寂しい……ゴーンさんは国を背負う人だからだろうけど」

 と、ゴーン氏との“格差”にカルプレス氏も苦笑する。ただし、拘置所生活が辛いものであったことは確かなようで、

「今でも拘置所内の音が耳に残っていますね。よく流れていたラジオの広告放送を聴くと、嫌な思い出がよみがえる。とにかく寂しかった。ただ、これで日本を嫌いになったりはしません。もともと日本が好きで日本に来たのですから。日本人が“当たり前”と思ってやっている行いが好きなんです。たとえば、通勤ラッシュでも、日本人は順番を守って乗り降りする。フランスではありえません。日本に根を下ろすつもりでいます」

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