ビットコインは「インチキ」か 日銀出身の経済学者が解説

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ビットコインは「インチキ」か

 インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の私設取引所「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」の破綻をきっかけに、仮想通貨をめぐる論争が喧しい。

「ビットコインはインチキだ」と切り捨てる人もいれば、「いや、Mt.Gox社の問題であって、ビットコインそのものには問題がない」と考える人もいる。

 はたして、どちらの言い分が正しいのか? 日本銀行出身で、『貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム―』などの著書で知られる岩村充・早稲田大学大学院教授に話を聞いた。

「今回の事件について言えば、あくまでMt.Gox社という一企業の危機管理の問題だろう。ビットコインそのものがインチキであるかないかは、また別の話として考えるべきだ」

ビットコインは金貨と同じ

○ビットコインは金貨と同じ

 岩村教授は、「ビットコインは金貨と同じ実物貨幣である」と考えている。どういうことか?

「貨幣には、金貨のような実物貨幣と、紙幣のような信用貨幣の2種類ある。ビットコインの価値は、発行主体の信用に依存しているわけではなく、ネット上の数式問題を解く〈発掘〉コストから生じていると考えられるので、金貨と同じ実物貨幣に分類できる」

「つまりビットコインを発見するための計算処理費用が、ビットコインの限界費用価格、つまり市場価格だと考えることができる」

ビットコインの問題点

 ただし、実物貨幣としてのビットコインには大きな欠点があると、岩村教授は語る。

「ビットコインは、2100万個ぐらいで流通量が飽和点に達する仕組みだ。すでに1000万個以上のコインが〈発掘〉されており、この先〈発掘〉が進めば進むほど、そのコストが急激に上がる仕掛けになっている」

「それが、ビットコインの〈骨董品化〉を招いてしまう危険がある。つまり、ビットコインが稀少になり過ぎることにより、その価値が限界費用価格と切り離され、限られた人々の間で、あたかも骨董品のような感覚で取り引きされるようになってしまうのではないか」

通貨間競争に期待

 しかし、たとえビットコインが失敗に終わっても、新たな仮想通貨の試みはこれからも続いていくだろうと、岩村教授は見ている。

「ここ10年ほど、景気対策と称して、日米欧の中央銀行が大量のマネーを市場に供給するようになった。そのような通貨管理体制に対する不信感が、ビットコインという鬼子を生んだ」

「すでにビットコインと同じような仮想通貨は、Rippleなど100種類以上もある。そうした通貨たちが、互いに競争・淘汰を繰り返すことにより、貨幣が進化していく。それは歓迎すべきことだと私は考えています」

 かつて経済学者ハイエクが唱えた通貨間自由競争の時代が、ついに幕を開けたのかも知れない。

デイリー新潮編集部

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