14億円横領事件「アニータ」夫が出所後経理職に再就職もふたたび持ち逃げか

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経理の仕事を得るも…

 その後は、多少の紆余曲折があったという。

「ところが、駆け込み餃子は1カ月ほどで辞めてしまいました。皿洗いもできないのでホール業務を担当していましたが、若い人にアゴで使われたりもして、キツかったのでしょう。ただ、本人は“アニータ事件のことをバラされたから”と言っているようですが、彼は酔うと口が軽くなる。僕たちは口外しませんが、初対面の人にも“僕の名前をネットで調べると出てきますよ”とか言ってしまうんです。その後、ヤマト運輸でも働いたみたいですが、左足を骨折したとかで辞めてしまい、困っている千田と10月末ごろ会いました。そこで僕は、“11月からうちで経理の仕事をしないか”と持ちかけたんです」

 人を信じる玄代表の本領発揮、であろう。

「言い方は悪いですけど、泥棒に経理を任せるなんて、とスタッフみんなから猛反対されて、実際、当時の経理と総務の社員2名が辞めてしまいました。でも、元泥棒だとマークされているからこそ、悪事ができるわけはないし、それに、普段の活動では出所者を信じて支援しているのに、自分の団体に出所者がきたら拒絶するのはおかしい、と思ったんです。罪を犯した経験があれば、悪事を防ぐことに長けているだろう、とも考えました。彼に賭けてみたんです。うちの団体は利益があまり出ないので、週4日、6時間勤務で、月10万円しか支払えないと伝えましたが、彼は“月7万5千円の年金もあるから生活できます”と。職員が2人辞めたときも、“ここに一生を捧げます。玄さんを支えます”と言ってくれていたんです」

 実際、一時は経理という元の鞘を与えられた千田氏は、水を得た魚のようだったというが……。

「働きはじめると、さすがは元経理という働きぶりで、粗さがしが上手い。千田が“万一計算が合わなくて自分が疑われるのは嫌だ”というので、金庫も用意しました。ところが、千田は3月8日以降、行方をくらまし、金庫に入っていたお金が足りなくなっていたのです」

 金庫にあるはずの約7万円がないほか、使途不明金が14万円ある、と玄代表はいうのだ。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年5月23日号掲載

特集「『ジャン・バルジャン』になれなかった 14億円横領の『アニータ』夫」より

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