天皇陛下に一般人がお目にかかる方法 体験者が語る「皇居勤労奉仕」の魅力

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あまりの神々しさ

 皇居勤労奉仕が始まったのは昭和20(1945)年。終戦直後、皇居も空襲に遭い、焼け落ちた場所があったことを知った宮城県の有志が「後片付けをさせてほしい」と手弁当で上京、奉仕を許されたことがきっかけとなり、全国から続々と奉仕団が集まるようになったという。

 現在では、祝日のない週の月曜から木曜、火曜から金曜の4日間が奉仕日とされ、うち3日を皇居、1日を赤坂御用地にて、清掃や草むしりなどの作業に当たる。

 この勤労奉仕をおすすめしたい最大の要因は、天皇陛下、皇后陛下から、直に「ご会釈」を賜われるからだ。

「ご会釈」と聞くと、草むしりなどをしているところへ両陛下が歩いていらっしゃり、文字通り「ご会釈」をしてくださるもの、と思われるかもしれないが、違う。

 ご会釈用の部屋へ通され、奉仕団ごとに整列。そこへ天皇皇后両陛下がお出ましになり、各団が普段どんな活動をされているのかなど直々にご下問をされ、言葉を交わすことができるのだ。答えられるのは各団の団長だけだが、その後ろに立つ団員も感激の涙を流す者が後を立たない。

 とにかく、両陛下と距離が近いのだ。我が団では両陛下のあまりの神々しさ、そして美智子皇后陛下(当時)から放たれる、なんともいえない高貴な香りが「いまだに忘れられない」とみな口を揃える。

 ただでさえ、お忙しい公務の中、週に2度はこうしたご会釈の時間を両陛下が取られるという事実。皇居勤労奉仕とは「奉仕」とはいえ、その実、天皇皇后両陛下をはじめとするご皇室の方々、さらに宮内庁の方々を総動員しての、国民大接待の場なのである。

 奉仕団50人ほどに1人、宮内庁管理部庭園課の方がつき、1日中アテンドをしてくれる。奉仕場所へ辿り着くまで、広い皇居の中、一般の皇居参観では決して立ち入ることのできない場所まで、勤労奉仕では立ち入りを許される。肝心の奉仕の時間よりもこの見学の時間のほうが圧倒的に長いのだ。これを「接待」といわずになんといおうか。

 どうすれば、その「接待」を受けることができるのか? 宮内庁に申し込めばいいのだ。

 年齢制限は15歳から75歳。15名から60名までを一団とする。このために集まったのではなく、普段から活動をしている仲間であることが望ましいとされ、その名簿とともに奉仕に入りたい希望の日にちを第三希望まで明記して、宮内庁へ提出する。すると、宮内庁で人数調整をした上、奉仕許可証が発行され、当日を迎えることとなる。

 ……と、以前まではこの段取りでスムーズに参加できていたのだが、上皇陛下のご退位が決まったことを契機に、にわかに様相が変わってきた。「最後のご奉仕」と、申し込みが殺到し出したのである。

 そのブームはいまだに続いている。新天皇陛下に「ひと目お会いしたい」と、今後はさらに増えるかもしれない。

 総勢300人(10団体ほど)が上限とされている中、その倍の申し込みがあり、抽選が行われている。今後の申し込み状況を宮内庁のHPでチェックすると、すでに6月は決定済み、夏の期間は行われず、再開される9月も埋まりつつある状況だ。寒いからか「冬は申し込みが比較的少ない」という情報もある。

 4時間待っての一般参賀か、4日間を使っての皇居勤労奉仕か、はたまた何か社会的に成果を上げて、園遊会やお茶会に招待されるのを待つか。あなたはどうする?

秦まゆな
日本文化案内人・文筆家。千葉県市川市生まれ。学習院大学文学部史学科卒。「母国・日本の歴史を正しく知り、我が子に伝えられる親をつくる」ために執筆・セミナーなどで活動中。『古事記』『日本書紀』『ホツマツタヱ』などをもとに全国の神社をめぐり、日々取材を進めている。著書に『日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々』(マイナビ)、『美しい古墳』(白洲信哉共著・ワニPLUS新書)など。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月4日掲載

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