香川照之と父・市川猿翁「二度と会わない」から20年後の親子和解

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「貴乃花」家族和解でひもとく有名人「骨肉の争い」――香川照之

〈テーマが「父と子」という映画にとにかく弱いのである〉

 と、俳優の香川照之(53)は自著に記している。更に、

〈物心付いた時には私には父親がいなかった。喪失感はなかった。最初からないものに喪失感は感じない〉

 と続ける。香川は1965年、歌舞伎俳優の父・市川猿之助(79)=現・猿翁=と女優の母・浜木綿子(ゆうこ)(83)との間に生まれた。しかし、猿之助は間もなく出奔。照之が2歳の時に離婚は成立し、照之は浜に引き取られた。浜の本姓は「香川」である。28歳の猿之助が向かった先は、44歳で人妻の舞踊家・藤間紫(むらさき)。藤間の夫は人間国宝で後に文化勲章も受章した六世藤間勘十郎だった。

 猿之助が藤間紫の様々なサポートを受け、スーパー歌舞伎で世間の耳目を集め始めたちょうどその頃、香川は東大文学部を卒業し、役者の道を選択した。そして、91年2月、24年ぶりに公演先へ父を訪ねたのだった。その時の模様は、「父・猿之助に会いに行った」というタイトルが付き、〈ぼくは今、本当の親子関係を理解していくために今年ほど重要な意味を持っていた年はなかったと思っている〉という書き出しで、婦人公論91年8月号に仔細に綴られている。フランソワーズ・サガンの『悲しみよ こんにちは』を思わせる内省的な筆致。内容があまりに絶望的なのに、それを冷静に綴っていられるのは、およそ四半世紀に及ぶ父の不在に喪失感がなかったということのひとつの証明になるだろうか。

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