西鉄バスジャック事件、ひきこもり少年が「2ちゃんねる」に犯行予告【平成の怪事件簿】

国内 社会 2019年4月26日掲載

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 平成の事件史を振り返るとき、舞台装置に「インターネット」が登場したことが、ひとつの特徴といえるかもしれない。「西鉄バスジャック事件」では、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に犯人からの“メッセージ”が書き込まれていたことが話題になった。(福田ますみ ノンフィクション・ライター)

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 2000年5月3日午後0時56分、西鉄天神バスセンター(福岡市)行き高速バス「わかくす号」が佐賀駅バスセンターを出発した。ゴールデンウィークの最中ということもあり、車内はのんびりした雰囲気が漂い、あちこちで笑い声が響いていた。
 
 異変が起きたのは、午後1時35分頃、九州自動車道太宰府インターチェンジを過ぎたあたりである。バスの前方で突然誰かが大きな声でわめき始めた。
 
 驚いた乗客が見ると、左側前方にいた少年が、全長40センチもの牛刀を振りかざして立ち上がり、「このバスを乗っ取る」と叫んでいる。その時バスには、少年を含む乗客21人と運転手、合計23人が乗っていた。

 色白で縁なしの眼鏡をかけた小柄な少年は、その姿に不釣り合いなほど大きな牛刀を握りながら、「荷物を前の方に持ってきて積み上げろ。客は全員後ろに移動しろ」と命令した。ところが、高木千代子さん(仮名・当時34歳)は1人、事件が起きたことも知らず眠っていて席を移動しなかった。

「あなた、ふて腐れていますね~」

 少年は冷ややか言うと、いきなり彼女の首のあたりに切りつけた。それまで半信半疑だった車内の空気はいっぺんに凍りついた。その後少年は、男性客を後列に女性客を前列に集め、運転手には、「まっすぐ走ってください」と指示した。午後2時40分過ぎ、バスが門司・小倉東インターチェンジに入る頃、トイレ行きを許された女性が下車後、そのまま逃走、高速道路上の非常電話を便って事件を通報した。少年はこの逃走に激昂し、「あいつは裏切った。見せしめのために1人殺します」と言うやいなや、山田裕子さん(仮名・当時50歳)の首や顔を2、3回、ズブズブと刺した。とたんに血がものすごい勢いで噴出し、山田さんは通路にどさっと倒れた。少年はその血に指を浸して舐め、「血がすごいですねえ」と言ってにやにや笑ったという。
 
 3人目の犠牲者が出たのはこのすぐ後である。1人の女性がバスの窓から脱出したのに気づかなかった少年は、窓が開いたままになっているのを見とがめ、近くに座っていた土田陽子さん(仮名・当時68歳)に向かって、「何をしている。逃げようとしているのか」と近づき、首を刺した。土田さんは「ぎゃ一つ」と悲鳴を上げ、隣の座席に倒れ込んだ。するとまた、後部座席で男性が飛び降りた。少年は再び土田さんに近づくと、「私じゃない!」と叫んで、腕で必死に身を守ろうとする彼女に再び切りつけた。バケツをぶちまけたように床に鮮血が流れ、車内は血のにおいで充満した。
 
 午後5時50分、東広島市の奥屋パーキングエリアに停車。土田さん、山田さん、高木さんの3人は降ろされたが、土田さんは既に死亡していた。

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