巨人、吉川尚の代役で「山本泰寛」にビッグチャンス OBからは“仁志敏久2世”の声

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球史に残る千葉茂の“ファール力”

 典型的な二塁手のイメージを持つ選手を表から挙げるなら、西武とヤクルトで活躍した西武監督の辻発彦(60)が筆頭だろう。

 更にもう1人を選ぶなら、「19年シーズンで引退」を18年の契約更改で発表して話題を呼んだ日ハムの田中賢介(37)になるだろうか。

 2人とも守備力は抜群。その代わり、打率は決して高くない。ホームランとなると共に年数本という具合で、もちろんファンも長打力は期待しなかった。それこそ守備力を買われ、併殺の美しさで“ゼニ”を取るタイプだ。

 その一方で、打撃力を誇った二塁手もいる。横浜ベイスターズ(現:DeNA)やロッテで活躍し、年平均20本とホームランを打ちまくったロバート・ローズ(52)は別格かもしれない。

 だが巨人で11年間、横浜で3年間プレーした仁志敏久(47)も、年平均11本のホームランという数字を残している。

 これこそが、小田氏が山本泰寛を“仁志2世”として期待を寄せる最大の要因だ。表をご覧いただきたいが、山本はプロ入りしてからホームランを僅か1本しか打っていない。かなりの巨人ファンでも彼に長打力を期待していないだろうが、小田氏によると素質は充分にあるという。

「実は山本本人も気づいていないのかもしれませんが、打撃練習を見ていると、ミート時のインパクトに光るものがあります。バットを非常に強い力でボールに当てている。あれを磨けば、相当な中・長距離ヒッターに成長するはずです。ローズは無理にしても、仁志さんレベルの長打力を獲得することは、不可能なことではないはずです」

 実のところ山本は、走攻守の3拍子が揃っているタイプだ。しかし、そちらの方向性では、吉川尚輝の魅力を超えることはできない。監督の原辰徳を筆頭としてフロント陣に「お、山本はいいな」と思わせるには、吉川の持っていない長打力を花開かせるしかないのだ。

「といっても、長打力は一朝一夕には成長しません。ならば、ファールで粘る姿勢を毎日意識するだけでも、相当に変わってくるのも事実です。相手ピッチャーが8球、10球を投げなければならないバッターになれば、原監督はもちろん、巨人ファンも注目するようになります。そうして存在感を高め、吉川との激しい競争を糧に、バッティングを向上させていく。巨人というチームにとっても、山本本人にとっても、理想的なシナリオとなります」(同・小田氏)

 仁志に続いて、巨人の二塁手として通算ホームラン数2位にランクインした千葉茂(1919~2002)は、川上哲治(1920~2013)と青田昇(1924~1997)と共に第一次巨人黄金期を支えたことで知られる。

 千葉の魅力は華麗な守備にあり、名二塁手の代表格としてファンに愛された。だが打撃の評価も高く、抜群の選球眼とファールで粘りに粘るスタイルは「バットにとりもちが付いている」と賛嘆されたという。山本が“仁志2世”になるためには、“千葉2世”を目指すことが必要なのかもしれない。

「野球の神様は、どんな選手にも1回、大きなチャンスを与えます。そして山本にとっては、吉川尚輝のケガによって回ってきた出場機会が、“野球人生における最初で最後のチャンス”かもしれません。これをきっかけに二塁手としてレギュラーに定着するか、このまま2軍と1軍を行き来する選手で終わってしまうかが懸かっています。今季で決めなければ野球人生は終わり、というくらいの意気込みで試合に臨んでほしいですね」(同・小田氏)

週刊新潮WEB取材班

2019年4月25日掲載

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