巨人、中継ぎ投手陣のカギを握る吉川(光)、ここが大問題【柴田勲のセブンアイズ】
巨人、5球団との対戦を一巡させて8勝6敗(15日時点)、これをどう見るかだが、まだ始まったばかりだ。貯金2ということで、まずまずといったところか。
それにしても開幕前に心配していたことが現実になった。投手陣のことだ。
先発陣では頼りになるのはやはり、菅野智之と山口俊、それにメルセデスが合格点か。先発陣の整備もさることながら、開幕前から指摘されていた中継ぎ投手陣の脆さが露呈した。
12日からのヤクルト3連戦、先陣を切った菅野は7回を1失点と試合を作ってモノにしたが、13、14日はひどかった。先発したテイラー・ヤングマン、畠世周が試合を作れず、勝負は中盤以降にもつれ込んだが、中継ぎ陣が総崩れだ。13日は吉川光夫が逆転の1発を浴びるなどリリーフ陣で7失点。14日は全6投手で被安打17の11失点。被本塁打は2試合で7本だった。2日間で22失点だ。
ハッキリ言って、コントロールが悪すぎる。
投球の基本はまずはアウトローへの真っすぐ、そしてインハイへの真っすぐをどれだけキチンと投げられるかだ。変化球は打者のベルトより下を狙う。これができていない。
キャンプからブルペンで連日、投球練習をしてオープン戦などでその精度を確認してきたはずだ。
それがエイヤッと投げて、あとはボールに聞いて下さいみたいなもので、ど真ん中に行ってはカーンと快音を残してスタンドインだ。失投、失投の連発だ。捕手が要求したところに3、4割ではベンチもイヤになる。
私は現役時代、194本の本塁打を打ったが、180本くらいが失投で、「うまく打ったなあ」と自賛できたのはせいぜい15~6本だ。王(貞治)さんにしても868本塁打を記録したが、700本くらいは甘い球、いま話した失投を狙ったもので、しかも初球が多かった。
どれだけ球が速くても球威があっても、コントロールが悪いことには話にならない。対戦する打者に関して、「このコースに強い」とか「この球種に弱い」などど情報・分析が過多になるほど入っているけど、投手は相手だけではなく、「自分との戦い」に向き合わなければならない。
巨人の今季の大きなテーマの1つは6、7回あたりで2点差のリードしている試合をしっかりと勝ちきることにある。昨季は中継ぎ・救援陣で落とした試合が20あった。
一度、私は中継ぎ投手陣では吉川光がカギを握ると書いた。昨季までのプロ12年間、主に先発マウンドを担ってきた。今季からは中継ぎ専従となった。
巨人の中継ぎ陣は宮國椋丞、戸根千明、中川皓太、桜井俊貴らだが、彼らを引っ張るのは経験を積んできた31歳のベテラン、吉川光だろう。「山口鉄也2世」(※注1)としても巨人首脳は期待していると思う。軸として大きく機能していけば中継ぎ陣も変わってくるのではないか。
打線だが、吉川尚輝の離脱は大きいな。腰痛を訴えて12日から欠場。開幕から11試合連続で「1番・二塁」で出場して打率3割9分、3打点。出塁率も・432と高かった。リードオフマンとして充分な活躍だった。
彼の持ち味は俊足にある。出塁すれば、坂本勇人、丸佳浩が出てくる。相手投手は背負った吉川尚を気にして、坂本らとの対戦に集中しきれないという利点もあった。
吉川尚がスタメンを外れた12日は田中俊太、13、14日は吉川大幾が代役を務めたものの、2人で9打数1安打とあまりに物足りなかった。
16日からは鹿児島、熊本で対広島2連戦。原辰徳監督は吉川尚の離脱が長引くと判断したのか。「次善の策」として「1番・坂本」、「2番・丸」の構想を打ち出した。この2人は打撃好調だ。相手にとっては脅威のコンビで、実現すればあとは陽岱鋼、クリスチャン・ビヤヌエバ、アレックス・ゲレーロがどれだけ働いてくれるかだ。
最後に主砲の岡本和真だが、やや大振りになっている。打撃練習でもスタンドインだけを狙ってバットを振っているように映る。打撃練習からもっとライナー性の打球を打つように心がけるべきだろう。彼はアッパーの傾向で打ち損じるとポップフライやゴロになりやすい。これでは率は残せない。(※注2)試合になったら打撃練習のことは忘れていい。あとは自分の打撃に徹することだ。
岡本、どちらかと言えば、打撃不振に陥ると長引くところがあった。今季も少し悪くなりかけたが、すぐに調子を戻してきた。このへんは昨季の教訓を踏まえた進歩だ。
繰り返すが、まだ5球団との対戦を一巡したばかりだ。30試合を過ぎないと本当の姿が見えてこない。中継ぎ陣の再整備を含めて原監督、どうやって理想のチーム形を作っていくのか。じっくりと見ていきたい。
※注1 左腕のリリーフとして活躍。ケガに強く、9年連続60試合以上登板を達成した鉄腕。
※注2 15日現在、打率・245、5本塁打、打点15、出塁率・333。