鬼畜親の虐待事件、原因は「親の劣化」――家庭のしつけを法規制の愚

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著しい「親の劣化」

 評論家の唐沢俊一氏が指摘するのは、昨今の著しい「親の劣化」である。

「1980年代以降、行き過ぎた個人主義や人権主義の考え方が家庭にも入り込んできました。“人間は自由に生きるべきである”と教えられた若い親たちにとって、子どもは自由を阻害する邪魔者に見えているのだと思います。だから、“犠牲者”である自分の苛立ちや怒りを暴力という形で子どもにぶつけて恥じない。そして、虐待が露見したら、“しつけ”という言葉で正当化しようとする。卑怯極まりない振る舞いです。愛情も責任感も欠如した親が減らない限り、法改正によって虐待事件が無くなるとは到底、思えません」

 もちろん、すべての親をひと括りにするわけではないが、加減など一切考えず、容赦なく子どもに暴力を振るって命を奪う親が後を絶たないのも事実。危機感を募らせるのは、脚本家の橋田壽賀子氏も同じだ。

「すべての虐待は子どもではなく親の問題です。大人になり切れず、親の自覚もない人間がモンスターペアレントになってしまう。現実に、そんな異常な親が存在する以上、法律で“体罰はダメ”と定めるだけでは無責任ですよ。虐待をやめられない親はより陰湿な手段に流れてしまう。それとは別に、子育てに悩んで思わず手が出てしまう親も少なくないはずです。児童相談所だけではなく、親を矯正・教育する施設を造ることも考えた方がいい」

 他方、評論家の呉智英氏はこんな見解を示す。

「家庭内に法権力が介入することには慎重を期すべきです。もちろん、“それでは体罰を野放しにするのか”という意見も理解できる。しかし、悪事を働いたわが子を偶発的に叩くのと、執拗に暴力を振るい続けるのでは全く意味合いが異なります。後者の場合、親がいじめを快楽と感じている。今回の法改正はこんな親の犠牲になっている子どもを救うための緊急措置的な妥協策なのでしょう」

 にしても、家庭でのしつけを法で縛りつけるのはよほどのことである。

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