コカイン逮捕で思い出す「勝新太郎」、保釈のピエール瀧とはスケールが違い過ぎてア然

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新CMが1日で打ち切り

「逮捕された1月17日は、日本では勝新の新しいCMがスタートした日でした。この頃、ビール業界ではアサヒスーパードライが売上を急激に伸ばし、キリンが国内シェア5割を割り、いわゆる“ドライ戦争”が勃発していました。これに対しキリンは、それまでの『キリンビール』を『キリンラガービール』と改称。ラガーを浸透させるため、現在のソフトバンク白戸家のようなドラマ形式で、1年がかりのCM『ラ党の人々』の演出を、つかこうへい(1948〜2010)に依頼したのです。キャスティングには、主演の父役に勝新、母役に松坂慶子(66)、長女に手塚理美(57)、その夫に国広富之(65)、次女に富田靖子(50)、その夫にチェッカーズの藤井尚之(54)といった人気者を集めました。それが放送されはじめた日に、主役が逮捕されたわけです。制作費5億円、1年を予定していたCMが、たった1日でお蔵入りとなりました」(同・芸能記者)

 さらに2月からは映画「浪人街」(主演・原田芳雄[1940〜2011])、「孔雀王アシュラ伝説」(主演・阿部寛[54])の公開が控えていた。

「ラガービールのCM補償は5億円とも6億円とも報じられました。映画は準主役だった『浪人街』は8月公開に延期され、『孔雀王アシュラ伝説』は出番がそれほど多くないということでそのまま公開されました。当時、大物俳優の薬物事件を日本のマスコミは連日大きく取り上げましたが、現地のハワイでは、それほど注目されるような事件ではなかったようです。逮捕されたその日に略式起訴で1000ドルの罰金刑で済んでしまったんです。ただ、それで一件落着とはならなかった」(同・芸能記者)

 勝新はすぐに帰国しなかったのだ。罰金刑とはいえ、米国に麻薬を密輸しようとした人間を置いていていいのかを決める審判が残っていたこともあった。1月24日にはホノルルの移民帰化局での“電話”による行政処分を、目と目を合わせて話したいと拒否し、直接の審判を要求。すると、あっさり3月に審判が下されることが決定する。まずはそれで、帰国が延びた―。

 当時はワイドショー真っ盛りである。3月までヒマになった勝新をつかまえようと、日本の報道陣がハワイに乗り込む。単独インタビューに成功したのが、芸能レポーターの梨元勝氏(1944〜2010)だった。

「それまで勝新は、『日本からハワイにコカインを持ち込んだ』と供述したとされていました。ところが、この独占インタビューで、彼は意外なことを言い始めたのです。コカインとマリファナは、機内のトイレの入口で紳士然とした男から『勝さんのファンです。座頭市見てます。いい旅をしてください』と渡された。そのままトイレに入って、中を見ると『これはマズいと思って、そのまま(パンツに)入れちゃった』そうです」(同・芸能記者)

 3月になると、勝新は高等裁判所にリムジンで乗り付けた。サンディエゴからやって来た移民局巡回裁判官から、念願の直接の言い渡しが行われるのだ。結局、再入国禁止となる強制退去命令が下った。この直後に開かれた会見で、あの迷言が飛び出した。

勝新:なぜ、パンツの中に入っていたかわからない。今後は同様の事件を起こさないよう、もうパンツをはかないようにする。

 前出の芸能記者が振り返る。

「『もうパンツははかない』なんて、反省している人の言葉ではない。真面目な記者は怒っていましたが、我々は漫談でも見ているような感じでしたよ。梨本さんだって、ハワイで勝さんとゴルフしたりしていたんですから。結局、勝さんはこの審判を不服として連邦移民局に上訴した。それでまた大幅に帰国が伸びるわけです。なんでもハリウッド映画出演の予定があるとかで、再入国ができなくなるのは困るというのが表向きの理由でした。ただ、帰国して日本で逮捕されるのを恐れての時間稼ぎ、という説が根強かったですね」

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