「人工透析」患者は病院の定期的な収入源 「福生病院」事件に見る“闇”

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わずか3%の“腹膜透析”

 だが現実には、血液透析を止めることは、1年どころかほとんど間を置かずに死に至ることを意味する。実際、福生事件の女性が血液透析中止後、1週間で亡くなった。

 他方、腹膜透析は自分で透析液を入れ替えることができ、自宅での治療が可能。通院も、腎機能などをチェックするための月1、2回程度で事足りる。

「腹膜透析の場合、透析液と専用の機械さえ持って行けば海外旅行もできます。また、血液を体外に出さないので、透析後の疲労感もありません」(石橋由紀子氏)

 さらに、血液透析では患者ひとりにかかる医療費が年間約500万円であるのに対し、

「腹膜透析は100万円安く済むケースもある」(同)

 腹膜透析にも、腹膜が癒着したりするため永続的な治療ができず、治療期間は10年程度が限界という「難点」はある。しかし、まずは腹膜透析から始めて、苦しい血液透析を「先送り」することができるだけでも、患者のQOL(生活の質)の観点から考えればそれを行わない手はないように思える。血液透析と腹膜透析の併用療法で、血液透析の回数およびそれに伴う苦痛を減らすことも可能だ。

 しかし、日本の透析療法は血液が97%を占め、腹膜はわずか3%に過ぎない。なぜ、「手軽」な腹膜透析が腎臓病治療の片隅に追いやられているのか。その謎を解く鍵のひとつが「カネ」なのである。

 2017年末時点での透析患者数は約33万4千人で、その医療費は1年で1兆6千億円を超える巨額に上っている。その上、

「透析患者は年間5千人のペースで増えているので、毎年250億円ずつ透析医療費は増えていく計算になる」(厚労省関係者)

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