日本で流行の「国際ロマンス詐欺」 典型的な手口は“箱もの”、発祥の地はナイジェリア

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被害額1千万円はザラ、言語学習アプリで狙われる

 国際ロマンス詐欺の被害相談に応じているNPO法人「M-STEP」理事長・新川てるえ氏は、その被害件数について次のように語る。

「2018年5月から同年12月にかけて、私たちが行なったアンケート調査によれば、SNSで外国人と何らかのやり取りをしたと回答した510人のうち、142人が金銭被害を受けていました。そのなかで『箱もの』と呼ばれる詐欺行為に約半数の人が騙されていたことが判明したのです」(新川氏、以下同)

 国際ロマンス詐欺とはこの一連の外国人犯罪の総称であり、箱ものとは具体的に用いられる手口のひとつである。続けて、新川氏は解説する。

「まず、SNSなどを通じて知り合いになった詐欺師が、海外から大金の入ったアタッシュケースや、被害者への高価なプレゼント、金塊などを送ると言ってきます。つづいて、税関職員や配送業者役の人間から連絡があり、『手数料や罰金、書類作成料、保険料を支払わなければ届けられない』と、さまざまな理由をつけて金銭を請求されます。当然、素直に支払っても、その荷物(箱)が届くことはありません」

 新川氏によれば、被害額が1千万円にのぼるケースはざら。なかには5400万円もの大金をだまし取られたという女性も……。

「半年ほど前のケースですが、被害者は50代前半の女性でした。この女性もやはり『数億円の価値があるダイヤモンドを手に入れたが、今は戦地にいる。退役して日本に行くまで預かって欲しい』と言われたそうです。言われるがまま指示に従うと、税関の手数料に加えて、日本大使館に荷物が届いた際の手続き費用、ダイヤモンドの発掘証明手数料などが必要になると言われ、求められるたびに数百万円を振り込んでしまったそうです」

 この女性は、当初こそ犯人に抱いていた恋愛感情から指示に従った。だがやがて、詐欺にあったと認めたくない、元を取り戻したいと必死になってしまい、何度も払うハメに陥ってしまったという。

 とはいえ、なぜこんな簡単に騙されてしまうのか、と多くの人は疑問を持つに違いない。しかし、そこには詐欺師の巧妙なテクニックがあるのだ。

「たとえば、本物そっくりに作った偽パスポートを見せたり、自らの資産を明かして安心させるため偽の銀行口座にアクセスするよう指示したりなど、とにかく芸が細かい。さらに、SNSや出会い系アプリだけではなく、言語学習アプリでも詐欺狙いのアカウントが使われています。利用者の多くは英語を学ぼうと思って登録しているので、不信感を抱かずに接触し、コロッと詐欺師の手口に引っかかってしまうのです」

 初対面の外国人と会話ができる言語学習アプリのなかには、SNSに近いようなサービスを提供するものも。チャット機能などを使って、初対面の外国人と簡単にやりとりができてしまうのだ。

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