長寿研究から分かった「QOL」を上げるポイント――伊サルデーニャ島の暮らしに学ぶ

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昼寝とメラトニン

 炎症を減らす四つ目のポイントが「昼寝」です。

 睡眠不足が体に悪いのは言うまでもなく、長期にわたって寝不足が続けば、日中に人体が受けたダメージを回復できなくなります。そのせいで溜まった疲れやストレスが少しずつ体を壊し、最終的には手のつけられない炎症に変わってしまうのです。

 といっても、忙しい現代人が十分な睡眠を確保するのは至難のわざでしょう。そこで、ぜひ取り入れて欲しいのが「昼寝」の習慣です。

 昼寝がなまけ者の象徴のように思われたのは昔の話。近年では日本の厚労省が30分以内の短い仮眠の有効性を提唱し始めたほか、Googleやナイキといった大企業も従業員に昼寝を勧めており、いまや世界的に市民権を得つつあります。

 昼寝の有効性を示した研究はとても多く、たとえば次のようなメリットが確認されています。

・10~20分の昼寝:疲れた頭が回復し、集中力と生産性が上がる
・30分の昼寝:肉体の疲れが回復し、健康の維持に役立つ

 まだ昼寝の最適な量まではわかっていませんが、複数のデータを総合すると、1日15~30分ほどで全身がリフレッシュするようです。サルデーニャ島の老人たちも、だいたい午後1~2時のあいだに1回15分の昼寝をするケースが多いため、まずはこのくらいから試してみてください。

 というと、「15分だけ寝るのは難しい」と思われる方もいるかもしれませんが、心配はいりません。多くの研究により、たんに目を閉じて10~15分じっとしているだけでも、脳と体がちゃんとリフレッシュする事実が確認されています。昼寝が苦手な人は、目を閉じて何もしない時間を作るところから始めましょう。

 ただし、それでも日中の眠気が去らない場合は、夜寝る前に“メラトニン”という物質を含むサプリを飲むのも手です。

 メラトニンは体内時計をコントロールし、私たちを自然な眠りに誘うホルモンの一種。不眠などに悩む現代人には、この物質が正常に分泌されていないケースがとても多いのです。

 特に、日中は眠かったのにベッドに入るとなぜか眠れないような人は、メラトニンがうまく働いていない可能性が大。寝床に入る30~120分前に1回0・5ミリグラムからスタートし、それでも効果がみられなければ1週間ごとに0・5ミリグラムずつ増やしてください。

 もっとも、現時点でメラトニンのサプリは国内のサイトや薬局では手に入らないため、iHerb(http://jp.iherb.com/)のような海外サイトから個人輸入するといいでしょう。

 本稿では、世界の長寿研究をベースに、日々のQOL(Quality of Life)を上げる方法をご紹介してきました。もちろん健康の秘訣はほかにも数多く存在しますが、まずはこの四つから取り組むのが近道です。

 最後に、大事なポイントをもうひとつ。サルデーニャ島の老人や日本の百寿者たちは、とにかく周囲との人間関係を大事にします。ひまを見ては家族や友人と集まり笑い話に興じるような人ほど、体が若い傾向があるのです。

 これは科学的にも裏づけのある事実で、たとえばハーバード大学の長期研究などでも、家族や友人と親密な人ほどストレスが低く、長生きでメンタル面も健やかになれるとの結果が出ています。ぜひサルデーニャ島の良い面を取り入れてみてください。

鈴木祐(すずき・ゆう)
サイエンスライター。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌記事の執筆を手がける。近著に『最高の体調』。本人のブログ「パレオな男」を運営中。

週刊新潮 2019年2月14日号掲載

特集「カギは『炎症』! 100年生きる人に『からだの秘密』――鈴木祐(サイエンスライター)」より

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