100歳以上の老人が世界で最も多い島 カギは「体内の炎症」にあった

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四つのポイント――スマホの壁紙にも自然を

 では、サルデーニャ島の老人たちは、なぜ炎症レベルが低いのでしょうか? その理由はさまざまですが、本稿ではポイントを四つにしぼります。

1 自然
2 発酵食品
3 ウォーキング
4 昼寝

 これらの要素は、いずれもサルデーニャ島や日本で暮らす百寿者のライフスタイル研究から導き出されたもの。どれも炎症を鎮める働きが確認されており、高い効果を発揮してくれます。

 まず一つ目の「自然」は、文字どおり森や海などの山川草木を意味します。

 言わずもがな、サルデーニャ島ほど豊かな自然に恵まれたエリアは多くありません。島の周縁には白い砂浜と群青の海が広がり、他で見られない希少な動植物も多く生息します。こんな環境で毎日を過ごせば、いかにも体調不良とは無縁でいられそうです。

 もちろん科学の世界でも、「自然」の効果は認められつつあります。

 たとえば直近では、英国のイースト・アングリア大学が「森林浴」に関する143件の過去データをまとめる調査を行いました。これは「メタ分析」と呼ばれる手法で、さまざまな情報を比較したぶんだけ信頼性は高くなります。現時点では、「森林浴」に関する最良のデータだと言えるでしょう。

 その結果は、研究チームも驚くほどでした。定期的に森や高原へ出かける人はコレステロール値が低くて糖尿病にもかかりにくいうえに、夜はぐっすりと眠れ、体内の炎症レベルが低かったのです。なんともすごい効果です。

 これほど自然が健康に良いのは、山や川の光景が、私たちのストレスを下げてくれる働きを持つからです。

 そもそも人類は、数十万世代にわたって豊かな自然の中で暮らしてきたため、体が動植物にかこまれた環境に適応しています。そのせいで私たちは、大自然を見ると本能的にやすらぎを感じ、ストレスが大きく減るのです。

 ただし、自然のメリットを味わうために、わざわざ遠くの山や高原まで出かけなくても構いません。いまの暮らしに、少しの自然を“ちょい足し”するだけでも、かなりの健康効果は得られるからです。

 なかでも手軽なのは、「自然の写真」です。

 自然の写真を見ただけでもストレスが減るのは有名な話で、アムステルダム自由大学が行った実験では、学生たちに「都会の風景」と「森の風景」という2パターンの画像を提示したところ、自然の写真を見たグループにだけリラックス反応が確認されました。どうやら私たちの脳は、ニセモノの自然でもやすらぎを感じてくれるようなのです。

 自然の写真を見る時間は1日5分でも構いません。スマホやパソコンの壁紙を森や海の写真に変えておくだけでも、あなたのストレスは減り、ひいては炎症が少しずつやわらいでいきます。

 また、もうひとつおすすめなのが、近くの公園でくつろぐことです。これはフィンランド政府の研究があきらかにした事実で、15分ほど公園のベンチに座っただけでも、私たちの健康レベルは大きく改善します。

 どんな都会でも、必ず近所に公園ぐらいはあるはず。仕事のあいまに出かけて弁当を食べてもいいですし、ただ木々をながめるだけでもいいでしょう。このちょっとした習慣が、あなたの体調不良を癒してくれるのです。

(2)へつづく

鈴木祐(すずき・ゆう)
サイエンスライター。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌記事の執筆を手がける。近著に『最高の体調』。本人のブログ「パレオな男」を運営中。

週刊新潮 2019年2月14日号掲載

特集「カギは『炎症』! 100年生きる人に『からだの秘密』――鈴木祐(サイエンスライター)」より

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