100歳以上の老人が世界で最も多い島 カギは「体内の炎症」にあった

ドクター新潮 健康 長寿

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「いつも疲れている人」は…

 2015年、アメリカ国立老化研究所のチームが、サルデーニャ島の謎を探る研究を行いました。島に住む百寿者のライフスタイルや血液サンプルを調べ、彼らのいったい何が違うのかを確かめたそうです。

 その結論をひとことでまとめると、

・サルデーニャ島の老人たちは、体内が“炎症”していない

 というものでした。先進国の住人にくらべて彼らは、老化の指標となる「炎症」レベルが格段に優れていたのです。

 炎症とは、人体がなんらかのダメージを受けた際に起きる反応を意味します。

 たとえば、あなたが間違って指を切ったら、すぐに傷から体液がにじみ出し、そのまわりが赤くはれ上がっていくでしょう。頭を打ったときも同じで、衝撃を受けた箇所が赤くなり、しばらくはジンジンとした痛みが続きます。

 これが、炎症です。いずれも人体のダメージを癒そうとして免疫システムが働き出した証拠で、ケガや感染を治すために欠かせないプロセスのひとつ。炎症がなければ、私たちの病気は回復しません。

 ところが、いっぽうで炎症は、私たちに悪さもします。切り傷のように数週間で治る症状ならいいですが、感染症や糖尿病などで体のダメージが慢性化すると、外敵を倒すために使う武器が逆に血管や細胞を傷つけ、人体を内側から壊し始めてしまうのです。

 しかも慢性的な炎症が起きる原因はとても幅広く、運動不足、栄養不良、肥満、タバコ、ストレス、睡眠不足、大気汚染など多岐にわたります。あなたの体にダメージをあたえるものは、すべて炎症の原因になり得るからです。

 その意味で、炎症は“ウルトラマン”のような存在だと言えます。怪獣を3分以内に倒してくれるうちはありがたいですが、もしバトルが何日も続いたら、ウルトラマンの攻撃の余波でビルや家屋が全壊し、ほどなく誰も住めなくなってしまうでしょう。

 炎症も同じで、戦いが長引くほど人体のダメージは蓄積し、やがて次のような症状が出ます。

・なぜかいつも疲れている
・頭やお腹、関節が定期的に痛む
・肌のブツブツやかゆみが治らない

 これらの変化は、慢性的な炎症が引き起こす症状のごく一部にすぎません。近年では炎症とメンタル面のつながりを調べた研究も進み、体内の炎症レベルが高い人ほど鬱病や不安症に悩まされやすいとの報告も増えてきました。

 さらに、最近は日本人の炎症レベルを調べた研究も多く、16年には、慶応大学のチームが85~110歳の高齢者1554人を調べた結果、100歳を超えても元気な男女ほど体内の炎症レベルが低い事実をあきらかにしています。現代でQOL(Quality of Life)を上げるには、炎症対策が必須なのです。

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