第4次焼き芋ブームの秘密 浅草・合羽橋“焼き芋道具店”の売上も10年間右肩上がり

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まだ拡大する市場規模

 現在の電気式はサツマイモを入れておけば、機械が自動的に焼き上げてくれる。専任スタッフを配置する必要がない。スーパーにとっては低コストで、かなりの売上を見込めるという。

「しかしながら、第4次焼き芋ブームの決定的な要因は、蜜が豊富な甘いサツマイモが開発されたことだと思います。昔のサツマイモは、ぼそぼそとした質感のものも珍しくありませんでしたが、今は本当に美味しい。そしてサツマイモはビタミンと繊維質が豊富ですから、折からの健康ブームも追い風になりました」(同・藤田社長)

 2000年代に入るとサツマイモの品種が注目されるようになり、一部はブランド化。06年2月に読売新聞は「[はやりもの考]高級焼き芋 産地をブランドに、庶民の味“大変身”」の記事を掲載した。

 文中では、種子島の安納芋や徳島の鳴門金時が人気を呼び、銀座のデパートや広尾の専門店など“高級・高価格路線”で売られている様子がレポートされている。

 移動販売車からスーパーへのシフトが「第4次ブーム」の特徴とする指摘も多いが、藤田社長は「焼き芋の移動販売車も、皆さんがイメージされているほど“絶滅”はしていません」と言う。

「今でも現役として活躍している車は、まだたくさんあります。しかしながら、新規参入が難しくなってきたのは事実です。ガス式は車に乗せると風で火が消えてしまい、ガスが垂れ流されてしまいます。非常に危険なため、マキ式しか車には乗せられないのです。ところが、マキ式は需用がないので、実質的に注文生産。非常に高額になってしまいます。焼き芋の利益率は高いとはいえ、初期投資の高さが参入障壁になっているんです」

 一方の電気式は現在も絶好調の売れ行きだ。藤田道具で焼き芋の関連商品は「ここ10年間は常に右肩上がり」だという。藤田社長は「毎年、8月になると売れ出します」と明かす。

「近年は八百屋さんと、農家の方がお得意さんですね。八百屋さんはスーパーと同じ売り方ですが、農家のみなさんは収穫した一部を自分たちで焼き、無人販売されるんですね。夏のかき氷屋さんが冬は焼き芋を売ることは昔からありますが、最近は通年で販売する専門店も増えています。また、冷凍した石焼き芋が、真夏のスイーツとして注目されています」

 藤田社長は「まだまだ焼き芋の市場規模は増加する」と断言する。焼き芋が通年販売される可能性も出てきたほか、何よりも年々、サツマイモの品質が向上している。美味しさに惹かれて、購入者の裾野が広がっているそうだ。

 俳句の世界で、もちろん焼き芋は冬の季語だ。だが、ひょっとすると数年先には、季節感を失っているのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月2日掲載

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