第3の選択肢「どちらでもない」が人気という「沖縄県民投票」の空騒ぎ

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県の「闘い」はつづく

「『辺野古』県民投票の会」の関係者は、「3択は苦渋の選択、肉を斬らせて骨を断つ覚悟での決断だった」と語るが、この決断が裏目に出て、骨まで斬られてしまう可能性もある。

 いずれにせよ、「どちらでもない」が無視できない規模の票を集めた場合、県民投票を実施した玉城知事には説明責任が生ずる。玉城知事側は、「埋立てに賛成でも反対でもないということは、さらなる国との話し合いや仕切り直しを求めているということだ」と主張するだろうが、自民党などの保守派は、「埋立ては望ましくないがやむをえないという意見を相当数含んでいる」と反論するだろう。両者の対立は継続し、それは4月の衆院補選や7月の参院選(または衆参同日選)に持ち込まれる。県民投票では何も決着せず、「移設容認」「移設反対」という対立の構図が残される恰好だ。

 が、前出の私大教授は、県民投票前の沖縄の空気感と投票後のそれは確実に違うものになるという。

「“どちらでもない”を選んだ県民は、従来の賛否二元論という政治のあり方にうんざりしている人々だと思います。政府への同調、県内世論への同調だけが選択肢ではないことに気づき、何が現実的で何が解決策かを自ら模索できる県民に成長するのではないか。この県民投票をきっかけに沖縄は変わるかもしれません」

 県民投票を終えても、辺野古移設の行方は不透明だ。埋立てのプロセスで発見された「軟弱地盤」も思ったより深刻である。軟弱地盤に対処するため、政府は設計変更を検討しているが、設計変更については知事の承認があらためて必要となる。今のところ知事がこれを承認する確率はきわめて低い。したがって、政府と沖縄県の「闘い」はつづき、法廷での係争もあらたに提起されるだろう。係争がいつ終わり、普天間基地の移設がいつ完了するのか、現段階ではまるで見当がつかない。

 私大教授の指摘するとおり、県民投票が賛否二元論から脱却する契機となるなら、私たちは沖縄の「変化」を我慢強く待つほかないのかもしれない。が、その間もカネと時間の莫大な浪費はつづく。当初3千億円と想定されていた辺野古移設経費だが、北部振興策など直接的な補助金も含めた経費は、筆者の試算ですでに3千億円を超え、今や天井が見えない状態だ。

 民主主義とはかくも高価なものなのか。深い溜息を禁じえない。

篠原章(しのはら・あきら)
評論家。1956年山梨県生まれ。経済学博士(成城大学)。大学教員を経て評論活動に入る。沖縄問題に造詣が深く、著書に『沖縄の不都合な真実』(共著)、『報道されない沖縄県基地問題の真実』(監修)、『外連の島・沖縄 基地と補助金のタブー』など。

週刊新潮 2019年2月28日号掲載

特集「第3の選択肢『どちらでもない』が人気という『沖縄県民投票』の空騒ぎ」より

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