第3の選択肢「どちらでもない」が人気という「沖縄県民投票」の空騒ぎ

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出口なき投票

 これについて、沖縄の私立大学で社会科学系の講座を担当するある教授は次のように指摘する。

「“どちらでもない”が沖縄県における最大の民意だと思いますよ。周囲から同調圧力がかかる通常の選挙と違って、今回は同調圧力をあまり感じないで投票できる。結果に拘束力もないから気楽に投票できる。となると、沖縄県民の多くが“どちらでもない”を選ぶ。過半数を超えるんじゃないでしょうか」

 琉球大学の理系学部に勤める教授も同意見だ。

「ぼくは県民投票には意味がないと思っていたんですが、“どちらでもない”が選択肢に入ったら俄然興味が出てきました。海を壊すのには賛成できない。でも国防上必要な基地移設も否定できない。そうなると“どちらでもない”しかないと素朴に考える県民は多いでしょう。知事選や国政選挙と違ってしがらみがないから好きなように投票できる。ぼく自身も、嘉手納基地に統合する案や勝連沖を埋め立てる案など他のプランをもう一度検討してほしいから、やはり“どちらでもない”に投票します。振り出しに戻るような話ですが、“どちらでもない”がいちばん正直な気持ちを表す選択肢です」

 基地問題に長く取り組んできた沖縄県庁の元幹部も「どちらでもない」に高い関心を示す。

「“どちらでもない”に票が集中することもありえます。今まで辺野古賛否の2択、あるいは保守か革新かの2択から選ぶことを強いられてきた県民にとって、“どちらでもない”はとても新鮮。賛成、反対どちらかに投票しようと思って投票所に足を運んだら、“どちらでもない”という選択肢を見て思わず○を付けてしまう人も少なくないでしょう」

「どちらでもない」の人気は想像以上に高い。筆者は当初「どちらでもない」は投票者の15%程度と予想していたが、現地取材を進めるうちに30〜40%もありうると考えるようになった。2月14日現在、「賛成」10〜20%、「反対」40〜50%、「どちらでもない」30〜40%と予想している。それでもなお「反対」が相対的に多い結果となるだろうが、「賛成」と「どちらでもない」の合計が「反対」を上回ることも大いにありうる。

 これに対して、民主党県連代表などを歴任した喜納昌吉元参院議員は、2択3択の問題ではないという。

「もっとずっと大切なことが置き去りにされている。それは、この投票には出口がないということだ。投票で民意を示せば辺野古の工事が止まる見込みはあるのか? 政府はあらかじめ取り合わないと釘を刺しており、期待できる状況ではない。このままではまたしても県民の思いは宙に浮いてしまうのではないか。そんななか唯一知事だけが、示された民意を理由として、改めて埋め立て承認を撤回する権限を持っている。玉城知事は、翁長前知事の遺志を受け継ぐと宣言して立候補したのだから、その言葉を守って、現知事として改めて撤回を宣言してほしい。知事が先頭に立って初めて、県民投票に命が吹き込まれ、意義が生まれる」

 おそらく玉城知事に撤回の覚悟はない。「どちらでもない」が「反対」を霞ませるほどの票を集めただけで、知事の「埋立て反対」姿勢は揺らぐのではないか。万一、「どちらでもない」が「反対」を上回れば、知事は「“どちらでもない”が沖縄県の民意です」と日本政府や米政府に伝えることになるが、「どっちでもいい」と付け加えるのだろうか。

次ページ:県の「闘い」はつづく

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