就活は本当に“売り手市場”? ルール廃止で激変する「就活戦線」の必勝戦略

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親世代とは異なる就活事情

〈企業の採用方法、学生の活動も親世代の頃と比べて様変わりしている。どう変わったのか。キーワードは“クローズ化”である。〉

 大昔の就職活動は、指定校制やリクルーター制、あるいはコネクションを使うなど、クローズドなマーケットで行われていました。

 それが25年ほど前、つまり今の学生の親世代が就職活動をしていた頃から、「リクナビ」「マイナビ」といったマス媒体が登場し、誰でもどこでも大量の就職情報を受け取れるようになりました。マーケットがオープン化したのです。

〈“オープン化”により、これまでの学歴一辺倒が影を潜め、雇用機会が均等化されていった。一見すると良いことずくめに思える“オープン化”だが、そこから大きな弊害が生まれた。〉

「誰でも受けることができる」ということは、「絶対に受からない会社も受けることができる」ということ。例えば、食品大手の明治ホールディングスの倍率(応募者/内定者)が何倍かご存知ですか。千倍です。明治に限らず、多くの大手企業、有名企業では、「倍率100倍」は当たり前。私がいた頃のリクルート社でも、2万人が受けています。ワンクリックで済む「プレエントリー」を含めると5万人を超えていました。しかし、採用されたのはわずか100人でした。

 倍率が100倍だったら、単純に言えば100社受けないと内定が取れないということ。親御さんは、ご自身の体験からすれば信じられないかもしれませんが、今の就活は1人で何十社も受ける時代なのです。

 親世代との違いでもう一点。親世代では「大学はサボりまくっていた」なんていう人もいるでしょうが、今の学生たちは8割がきちんと授業に出ています。それが、就活時期を迎え、1人で何十社も受けるとなると当然、授業を休みがちになる。それで大学の先生方が怒っているわけです。

 そんな大学の偉い人たちが集まってできたのが「就職問題懇談会(就問懇)」。そこが「学生の本分である学業を妨げるな」と政府に訴えているため、政府から経団連など企業側にルールの遵守を要請しようとしているわけです。

 僕も、学生は学業を優先すべきであり、企業は、学生に負担をかけるべきではないと思います。

 でも、就問懇のやり方には首を傾げざるを得ません。なぜなら、彼らは、学生の負荷を減らすために“学業を阻害しない時期にやれ”と、単に“時期”のことしか議論していないのです。実は、“時期”は学生の負荷とはあまり関係がありません。それどころか、時期を設定することで、採用活動はルール無視組が“水面下化”し、ルール遵守組とルール無視組が併存することで全体の就活時期が“長期化”し、却って学生に負担を強いています。

 学生が負担を感じているのは、“時期”ではなく、“方法”なのです。

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