文在寅で進む韓国の「ベネズエラ化」、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”

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不服従を呼びかける退役将軍たち

 1月30日、韓国の退役将軍が集まって現役の軍人に、「文在寅政権に服従するな」と呼び掛けた。2018年に結んだ「南北軍事分野合意書」は韓国軍の防衛能力を一気に落とす国家の自殺行為であるとして、軍人は拒否せよと訴えた。駐留経費の交渉で米国と葛藤を引き起こしたことも厳しく批判した。

 呼び掛けたのは、3人の元国防長官を含む予備役の将軍450人。「大韓民国守護予備役将軍団」の名称で「大韓民国国軍に告ぐ」を発表したのだ。麗澤大学の西岡力客員教授が、「国基研ろんだん」で日本語に翻訳している。

 2月7日には保守派の最大野党「自由韓国党」の有力議員、金鎮台(キム・ジンテ)氏が文在寅大統領の当選無効を主張した。2017年の大統領選挙当時のネットによる世論ねつ造事件で、文在寅氏の側近の慶尚南道知事が有罪判決を受けたため、「大統領も連座すべきだ」と主張したのだ。

 ベネズエラには今、2人の大統領がいる。左派のニコラス・マドゥロ大統領と、自分が大統領だと主張し、米国や欧州主要国が支持する野党指導者のフアン・グアイド暫定大統領(国民議会議長)だ。反米派の左派と親米派の保守の対立が激しくなり、国が真二つに裂けたのだ。

 ベネズエラと同様、韓国の左右対立も劇化する一方だ。今、韓国の牢獄には、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)という2人の保守派の大統領経験者が入っている。最近、そこに朴槿恵時代の最高裁長官も加わろうとしている。

 この2人には留まらない。退任後に平穏な生活を送った韓国の大統領はいない(掲載「韓国の歴代大統領の末路」表参照)。韓国は「第2の日本」ではない。親米派と反米派が内戦を繰り広げ、常に政情が不安定なラテンアメリカの国々に、もともと近いのである。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

2019年2月12日掲載

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