文在寅で進む韓国の「ベネズエラ化」、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”

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文/鈴置高史

 米韓同盟が音もなく崩れ始めた。韓国人の過半が「米国に支払う経費負担を増すぐらいなら、在韓米軍に出て行ってもらったほうがいい」と言い出したのだ。

 在韓米軍の駐留経費――韓国版「思いやり予算」を巡る米韓の交渉が暗礁に乗り上げた1月25日。世論調査会社のリアルメーターが「韓国側の分担経費の増額に応じない限り、在韓米軍を削減・撤収する」と米国が言ってきた場合、増額すべきか――と韓国人に聞いた。

 すると52.0%が「在韓米軍が削減・撤収しようとも増額には反対」と答えた。「賛成」が30.7%、「分からない・無応答」が17.3%だった。

 この世論調査の1か月ほど前の2018年12月28日。ハリー・ハリス駐韓米国大使が青瓦台(大統領官邸)を訪れ、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長に対し「米韓相互防衛条約を他の方式で履行する案も検討可能だ」と語った。

 要は「要求を飲まないのなら今後、在韓米軍は頼りにするな」と脅していたのだ。世論調査の結果は「売り言葉」に対する「買い言葉」の形で思わず漏れた、韓国人の本音だった。

 5割以上の韓国人が「米軍が出て行ってもいい」と言うようになったのは、北朝鮮との緊張緩和が原因だ。2018年6月にトランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長がシンガポールで会談した。

 それ以降、韓国には「戦争の可能性が大いに減った」との安堵感が広がり、左派からは「戦争が遠のいた以上、在韓米軍は不要だ」「北朝鮮を刺激する米軍がいないほうが平和になる」との声が高まった。

米帝が諸悪の根源だ

 保守の中にも「傲慢な米国」への反発を隠さない人が増えた。駐留経費問題に限らず、米国は韓国に言うことを聞かせたい時には、「米軍を引くぞ」と脅してきた。「平和ムード」は韓国人の心の奥底にあった反米感情も呼び覚ましたのだ。

 リアルメーターの調査では、自らを保守と考える人の3分の1に当たる34.1%が「米軍が引こうとも増額には反対」と答えた。「賛成」は50.2%だった。

 結局、2月10日に米韓は「駐留経費は前年比8.2%増の年間1兆380億ウォン台(約9億2200万ドル)、1年ごとに再交渉」で妥結、仮署名した。しかしこの交渉は米韓同盟の亀裂を露呈させたのである。

 2月27、28日にはベトナム・ハノイで2回目の米朝首脳会談が開かれる。この場で「さらなる平和」が謳いあげられることになろう。

 その後に金正恩委員長が韓国を訪問し、「民族の和解」を肉声で呼びかける可能性もある。そうなれば、「米軍を追い出し同じ民族で団結しよう」との声が韓国でますます高まるのは間違いない。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「韓米同盟こそが諸悪の根源」と考える親北派が中枢部を占めている。大統領自身も「米帝国主義は世界の諸民族の内紛に付けこんで兵を送り、覇権を維持している」と主張した左派の学者の書いた本が愛読書だ。国民にも読むべき本として勧めてもいる(拙著『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

 親北政権と北朝鮮にすれば、今の韓国の流れは「願ったりかなったり」――シナリオ通りであろう。

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