認知症患者に朗報か めまい薬で「忘れた記憶が蘇る」の真偽

ドクター新潮 医療

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 世の男たちにとって、またとない福音となった「バイアグラ」が、もともとは狭心症の薬だったというのは、よく知られた話。

 このほど我々に“記憶回復”という予想外の効能を与えてくれるかもしれないのは「メリスロン」という“めまい”のお薬である。

「今月8日、東京大や北海道大、京都大の研究チームが、市販されている抗めまい薬を使い、記憶を回復させる実験に成功したと発表したのです」(全国紙記者)

 実現すれば認知症患者から受験生まで、あらゆる人に福音をもたらしてくれそうなこの薬。一体どういうメカニズムなのか。医学博士の丸山篤史氏によれば、

「今回、注目されている『メリスロン』には、脳にあるヒスタミン受容体をブロックすることで、ヒスタミンが脳内で過剰になる作用があると考えられています。論文では、このことが記憶の想起に影響を与えた可能性が指摘されていました」

 もっとも、この朗報に諸手を挙げて飛びつくのは時期尚早で、

「実験では1週間前にみせた写真を覚えているかを調べ、メリスロンによって最大2倍、正解率が上昇したと報じられていました。ただ、この数字はあくまで比較前の成績が悪かった人の改善値で、成績が良かった人は逆に正解率が下がったと解釈できる実験データもあった。また、実験が行われたのは写真を思い出せるかについてで、結果が認知機能全般に当てはまるとは限りませんし、効果が持続するかどうかも、これからの研究を待たなければなりません」(同)

 とはいえ、「おくむらメモリークリニック」院長の奥村歩氏が言うように、

「認知症の薬は四半世紀にわたって新薬が見つかっていない状況です。そんな中、安全性が担保されためまいの薬が人間の脳の記憶に関与していると分かったことには希望が持てるでしょう」

 人類はまた大きな一歩を踏み出そうとしている?

週刊新潮 2019年1月24日号掲載

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