月の裏側に「中国探査機」着陸 懸念される“領有権”問題

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 世界中が人類の進歩に熱狂した、アポロ11号の有人月面着陸。コラムニストの山本夏彦は〈何用あって月世界へ〉と、過度な進歩主義に警鐘を鳴らしたが、それから半世紀。中国は、何用あって月世界の裏側へ?

 今月3日、中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」が世界で初めて月の裏側に着陸。宇宙開発で後発組の中国が、月において大金星を獲得した報せは、瞬く間に世界中に拡がった。

「今後は、月に豊富にあるレアアースや、“夢のエネルギー源”といわれるヘリウム3の採取が進められると思われます」(科学部記者)

 東シナ海における中国のがめつい資源漁りを見るに、月面での行動が不安視されるが、JAXAの的川泰宣(まとがわやすのり)名誉教授は辛くも冷静だ。

「ヘリウム3があることは確かですが、エネルギーに転化する技術はまだないです。なので、すぐに熾烈な資源戦争が勃発することは考えにくい。むしろ今回、月面で人間が暮らすためのヒントが出てくることを期待しています。探査機には、植物の種や蚕の卵が積まれていますからね」

 昨年行われた国際宇宙探査フォーラムでは、次の国際協力の中心は「月」で一致している。そうした中、

「今後、議論されていくのは所有権の問題ですね。未だに法整備されていませんから。ゴールドラッシュよろしく早い者勝ちで研究開発を進めたい国々は、所有権の議論には頬かむりを決めこんできました」(同)

 宇宙開発の枠組みで、中国の発言権が強まることは間違いない。中国事情に詳しい富坂聰拓殖大教授が危惧する。

「安全保障の考え方は、陸海空ではなく、サイバー・深海・宇宙の三つの空間支配にシフトチェンジしています。月の裏側に世界初の足跡を刻んだ中国が、ここにきていきなり所有権の主張を始める可能性は大いにある」

 領土拡大の用で月世界へ。

週刊新潮 2019年1月17日号掲載

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