撲滅されたはずの「梅毒」患者が2年連続5千人超え 感染源は爆買い中国人説

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感染源は風俗で遊ぶ中国人旅行者?

 日本政府観光局発表の統計によれば、訪日外国人数は2011年に621万8752人だったのが、2017年には2869万1073人と4倍以上に急増している。国別でトップの中国からの旅行者数は2017年で735万5818人だ。

「梅毒の感染源が何かというのは厳密には分かりませんが、感染経路は粘膜接触、つまり性行為やオーラルセックス(口腔性交)などです。中国人観光客の爆買いが流行りだした2010年代になってから患者数が増えたので、彼らの風俗店利用が原因ではないかと医療業界では噂されています」

 一説によれば、案内人が中国人の男性観光客を繁華街に連れて行き、風俗店を貸し切り状態にして遊ばせる、なんていうツアーもあるとか。そうした観光客の中に梅毒の感染者がいて、まずは風俗嬢に感染し、その後に来た日本人男性客、男性客の奥さんや交際相手に……という具合に日本で感染が拡大しているようだ。

「梅毒は先進国ではほぼ撲滅されているのですが、発展途上国では感染者が多数存在しています。中国も発展したとはいえ、農村地帯ではまだ流行しているのでしょう」

痛みを感じないため見逃してしまうことも

 次に、梅毒の進行スピードや、症状の段階について触れておくと、4つのレベルに分けることができる。

・第1期――感染して3週間ほどすると、亀頭や環状溝(カリ)、唇、口内などにしこりや潰瘍ができる

・第2期――感染後、3カ月~3年の状態。全身に発疹や、場合によっては発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる。発疹が消えると潜伏期に入るが、2~3年間は発疹を再発することがある

・第3期――感染後3~10年の状態。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍が発生する

・第4期――「鼻が落ちる」段階。感染後10年以降になると、多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳や脊髄、神経が侵食され、最終的には死に至ることもある

「第1期で感染した部位(陰部や口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができますが、この時は何もしなくても1~2週間ほどで自然になくなります。また、第2期でできる発疹は、アレルギーと違ってかゆみがないため分かりづらく、これも1カ月ほどで自然に治ってしまいます。だから、中には放置してしまう人もいるかもしれません。しばらく日本には患者がほとんどいなかったため、梅毒の症例は最近まで診たことがないという医者もたくさんいるのです。皮膚科の医者は分かると思いますが、内科は知識があればというところでしょう」(福元医師)

 症状がすぐに消えてしまうため分かりづらく、潜伏期間も長い。医師の中には梅毒を診たことがない人も多い。そうなると、感染に気付いた頃には手遅れで、鼻がもげ、死を待つばかり、ということも十分ありそうだが……。

「現代の日本で梅毒の感染者が第3期、第4期まで至ることはほとんどありません。というのは、血液検査をする際にチェック項目の中に梅毒が入っているためです。現代人は普通に生活していると、健康診断などのタイミングで血液検査をしますから、そうした時に梅毒の感染が発覚するのです」

 かつて梅毒は「不治の病」と言われ、少し前のエイズのように大変恐れられていたが、ペニシリンが発見された現在では後遺症もなく完治するという。「ひょっとしたら……」と思い当たるフシのある人は、男性の場合は泌尿器科、女性の場合は婦人科に行ってほしい。

 当然ながら、梅毒の感染を防ぐには、「まず、性行為の際、コンドームを使うこと、また、風俗に行かないこと」だそうだ。

 東京オリンピックが開催される2020年には、訪日外国人が4千万人を突破すると見込まれている。外国から大勢の人々がやってくることは喜ばしいことだが、今後、さらに梅毒患者数が増加する可能性も高い。日本が観光立国を目指すためには、こうしたリスクも覚悟しなければならないだろう。

取材・文/星野陽平

週刊新潮WEB取材班

2018年12月31日掲載

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