被害者や遺族に優しい法律を――家族3名を殺害された女性の悲痛な叫び “加害者天国”日本の現状

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“仕方なく提訴”

「どうして私だけが生き残ってしまったのか。あれから20年間、罪悪感が拭えません」

 と、遺族であるのに「罪の意識」に苛(さいな)まれる彼女の悲痛な叫びが続く。

「民法には、不法行為があった時点から20年で損害賠償請求権が消滅してしまう規定があることを知り、私は今年、民事での提訴に踏み切りました。殺人事件の公訴時効はなくなったのに、民法には時効的な要素が残っていること自体に歪(ゆが)みを感じます。今改めて思うのは、犯罪被害者や遺族に優しい世の中、法律であってほしいということです。本当のことを言えば、お金なんていりませんし、殺された3人の命をお金に換えることなどできないと思っています。それでも、現行のシステムの中で唯一できることが損害賠償請求。仕方なく提訴したに過ぎません。その唯一の手段で勝訴したとしても、結局、賠償金は払ってもらえないと思うと……」

 判決は2019年の1月10日に下される。

「どんな判決が出たとしても、失った家族3人にそれを報告することはないと思います。今回の提訴はあくまで、これをきっかけとして何が何でも犯人を捕まえ、失った3人に良い報告をするための『始まり』に過ぎないと考えているからです」(同)

 長田良二、小暮洋史、そして世田谷一家4人殺害事件の犯人「X」。彼らに一生、安眠を貪(むさぼ)らせないために、代執行制度の導入の是非が今問われている。この世に、「逃げ得」などあり得ないことを知らしめるために――。

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

特集「今のままでは『殺され損』被害者遺族が待ち望む『代執行制度』」より

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