イラク人質事件 共産党が育てたという“劣化ウラン弾高校生”の今

国内 社会 週刊新潮 2018年12月27日号掲載

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 中東で日本人が人質になるたび、自己責任をめぐる議論が百出する。その自己責任論の“起源”をたどれば、2004年にイラクで拘束された3邦人に行き着く。人質のなかでも、高校を出たばかりの今井紀明くんは注目された。自己責任という言葉に引っ叩(ぱた)かれた彼は今、どうしているのか。

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“劣化ウラン弾高校生”として、地元北海道では名を知られた存在だった今井くん。イラクで拘束されたことで、一夜にして全国区となった。イラク日本人人質事件を取材した社会部デスクが振り返る。

「人道支援活動家とフォトジャーナリストと一緒に捕まった彼は、当時18歳。そんな若者がなぜ拘束されるのかと不思議でなりませんでした。しかし、高校生時分に劣化ウラン弾による被害写真を見て衝撃を受け、在学中にNGOを設立。イラク戦争に反対し、劣化ウラン弾の危険性を訴えていた“活動的な”若者なのだと分かり、妙に納得したのを憶えています」

 3人は8日後に解放され、

「帰国したあとも、世間からかなりバッシングされましたよね。今井くんの父親は教師で日教組、母親が共産党系の病院勤務。拘束中には“自衛隊はイラクから撤退しろ”との主張もしていたので、右派から叩かれたのです」

 当時、小泉純一郎総理の秘書官だった小野次郎氏も、こう証言する。

「政府与党の関係者が“自己責任だ”とか“自作自演じゃないか”と言っている。3邦人の情報収集に当たっていた官邸にも、そんな話が伝わってきていました」

 各方面からの批判に晒された今井くんは、事件後の数年間、対人恐怖症やPTSDに悩まされる。

 が、時は流れ、33歳となった彼は今、大阪でNPO法人の理事長をしていた。

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