イラク人質事件 共産党が育てたという“劣化ウラン弾高校生”の今

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社会とのつながり

 その法人は、「D×P(ディーピー)」。大阪城からほど近い雑居ビル内に入っている。先の社会部デスクの解説。

「NPOの設立は12年。通信制や定時制高校の高校生に特化し、進学や就職のサポートを行っています。大学生や社会人のボランティアと対話の場を設け、“社会とのつながり”を意識させる。自身の可能性に気づかせてあげるんですね」

 法人設立までの話を今井くんから聞きたかったのだが、広報担当者によると、

「大変申し訳ございませんが、安田純平さん解放後、今井のコメントやイラク人質事件に関する取材はお断りをさせていただいております」

 とのこと。ならば、

「事件から14年が経ちますけれど、私たちも未だに消化しきれていないんです。私たち家族は、左翼的な政治信条を持っていたわけでもありませんし……」

 こう語る今井くんの母親の話で、法人設立までをお伝えする。

「紀明には“子どもたちに絵本でイラクの現状を伝えたい”という夢がありました。それには実際に見なければ、と現地入りしたのですが……。解放後は語学留学のためにイギリスへ渡り、そこでも嫌な思いをしたようです。帰国して大学を出ると、大阪の商社に就職して4年ほど勤めました。そこで通信制高校の教師をされている方と出会い、NPOの活動をはじめることになったのです」

 生きづらさを感じている若者の話を教師から聞き、自らの境遇が重なったのだろうという。

 法人の名は、夢(dream)と可能性(possibility)の頭文字。あの高校生は今なお、夢を追っていたのだ。

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

ワイド特集「平成の『カネと女と事件』」より

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