新幹線でたこ焼きも豚まんも食べられない!? 「不寛容」な「ギスギス社会ニッポン」

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山田優にも“不謹慎”の声が殺到

 さて、この話を聞いて読者諸兄はどう思われただろうか。世の中には、何かにつけて被害を受けた、迷惑をかけられたと声高に主張して、周囲に当たり散らす不寛容な人がいる。そんな“ギスギス人間”に、石田の妻は運悪く絡まれてしまったのだろう。そんな風に受け取った方も少なくないのではないか。

 ただ、その認識は間違いだと言わざるを得ない。昨年1月、ベビーシッターマッチングサービスを運営する株式会社キッズラインが、子育て中の女性340人を対象に行った調査では、ベビーカー利用時に「嫌な思いをした」と回答したのは56・8%と半数以上。「邪魔者扱いされた」「舌打ちされた」くらいは当然のことで、中には「ベビーカーを蹴られた」という耳を疑うような被害も報告されている。つまり、この中年女性は決して珍しい存在などではなく、むしろ「街でよく見かける普通の人」と捉えるべきなのだ。

 そして、これは残念ながら「ベビーカー」に限った話ではない。2017年10月に産業別労組UAゼンセンの流通部門が、販売やレジ業務などの接客対応をしている組合員を対象に調査を行ったところ、5万878件の回答があり、業務中に「暴言」や「威嚇・脅迫」などの迷惑行為に遭遇した人は73・9%にのぼった。また、49・9%がこのような問題が近年増えていると感じると回答したのだ。確かに、ネットの世界を見渡せば、“ギスギス人間”が増えていることが手に取るようにわかる。

 例えば、女医でタレントの友利新(ともりあらた)は、公園で息子がツツジの花の蜜を吸ったとSNSに投稿すると、「公園の花は国や自治体の所有物」「窃盗罪もしくは器物損壊罪」だと一部から批判があり、「謝罪」するに至った。

 また、女優の山田優は車で移動中、渋滞に巻き込まれたので、「道が混んでつかない」とSNSで呟いたところ「無神経」「最低」などの誹謗中傷が殺到。実は当日、関西では大阪北部地震が発生していたため、「不謹慎」だというのだ。

 やることなすことネットで叩かれるタレント・辻希美に寄せられるギスギスした声はさらに凄まじい。ある日など、いちご狩りへ行って、いちごに練乳をつけて食べたとSNSにあげただけで批判が寄せられた。「つみたての新鮮なイチゴはそのまま食べるべき」というのがその理由らしい。

 有名人であろうと一般人であろうと、そしてネットでも現実社会でも、叩かれる要素が1ミリでもあれば徹底的に叩かれる。何かにイラつきながら、棍棒(こんぼう)を構えて他人のあら探しをしているような人間が溢れかえっているのが、いまの日本なのだ。

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