今や“おひとり様”も歓迎… ビジネスやレジャーでも使われる「ラブホテル」最新事情

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“泊まる”以外の付加価値で勝負する

 こうして、本来の目的以外の使われ方もするようになったラブホ。業界では、いかにエンタメ性を高めるかが、集客のカギとなっているそうだ。

「ベッドやお風呂が広いのは大前提として、カラオケやVOD(動画配信サービス)の完備なども当たり前になってきています。最近は主に女性向けに、歯のホワイトニングができたり、コラーゲンマシンなどの美容機器や酸素カプセルを利用できたりなど、一般のホテルにはないサービスの提供で集客をはかっているところが多いですね」

 たとえば、コラーゲンマシンをエステサロンで利用しようと思うと、都内なら30分で7千円程度の料金がかかる。だが、たとえば神奈川・相模原市の「HOTEL Ailean Donan(アイリーン・ドナン)」には、部屋にマシンが設置されており、2時間休憩の7560円で使い放題となるのだ。

「こういったレジャー目的でも充実した時間が過ごせますが、オススメはビジネスシーンでの利用です。ノマドワークの場としては、個室なのでとても集中できるし、気分転換のアイテムも豊富に揃っている。ビジネスマンには最適です。東京・鶯谷の『HOTEL Apio(アピオ)』では、Wi-Fi完備でノートパソコンを貸し出したり、ロビーに挽きたてのコーヒーを置いたりと、ビジネス利用を歓迎しています」

 さらに日向氏は、出張時の宿泊先としても推奨したいという。

「出張は長距離移動などで、普段より疲れやすいですよね。ラブホであれば、部屋にマッサージチェアが用意されていることもありますし、広々したベッドで羽を伸ばすことができます。もともとラブホは繁華街の近くにあることが多く、途中外出OKのところならば、外へ身軽に飲みに行くのもいいでしょう。領収書も、ホテルを経営している会社名義で出してくれるので、怪しまれる心配もそうはないはずです」

使う人によって在り方が変わるのが「ラブホテル」

 あるときはカップルが愛を育むベッドルームに、またあるときは女性が美を追求するエステサロンや、ビジネスマンのオフィスと、客のニーズに合わせて姿を変える。これは、“泊まる”ことだけにとらわれない、ラブホだからこそできる経営戦術だ。

「ビジネスホテルのような機能性と、テーマパークのような非日常感などを併せ持った空間がラブホ。その特別感がウケて、最近ではコスプレ撮影会が開かれるような使い方の広がりも見せていました。大阪・大阪市の『HOTEL 富貴(ふき)』では、地元の大学生がギャラリーとして、作品を展示する場として使われたこともありました」

 今後はどんな進化を見せるのだろうか。

「おひとり様と同様に増えているのが『LGBT歓迎』を売りにするホテルです。とくに男性同士の場合、行為によって部屋を汚すというイメージが先行し、以前は利用を断られるところがありました。が、これも時代の流れか、男性同士でも利用OKのところがあるんです。一方で、『騒いで物を壊す』ことを危惧してか、『男子会』ができるホテルはあまりないようです。でも絶対に需要はあるはずなので、男性客獲得に力を入れていくホテルがこれから増えるのではと思っています」

 従来の形式にとらわれず、さまざまな需要を取り込むことで、どんな利用目的でも通用する場所へと変貌しつつある魔法の空間、「ラブホテル」。煌びやかな門をひとりでくぐれば、贅沢な世界が待っているのだ。なお風営法で18歳未満の立ち入りは禁じられているので、ご注意を。

取材・文/ますだポム子(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2018年12月5日掲載

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