肉は焼くより茹でるべし、魚は生で… 「老化の元凶」を退治する食事術

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朝昼夜で3対5対2

 薬味のようなものもバカにはできない。

「ごまはビタミンB1が豊富で、体内の老化を防ぐほか、ごまだけに含まれる抗酸化物質ゴマリグナンには、アンチエイジング効果のほか、肝機能を回復する力も期待できる。また、ハーブやスパイスは全般に、抗AGE作用および抗酸化作用が期待できます」

 体内の糖化を防ぐという意味では、食べ方も大事だという。牧田院長は、

「夜に向かうほど厳しい糖質制限を行い、朝昼夜の糖質摂取量のバランスを3対5対2くらいにすべき」

 だと訴える。その理由は先の則岡さんによれば、

「夜は副交感神経の働きが活発になるので、ただでさえ代謝が進んで太りやすくなる。AGEを避ける意味でも控えめが肝要です」

 また、空腹時に一気に糖質を摂ると血糖値が上がりすぎるので、間食を我慢するよりもむしろ、

「同じ量ならちょこちょこ食べたほうが太らない」

 と、牧田院長。総合内科専門医である秋津医院の秋津壽男院長も説く。

「AGEの防止では、血糖を上げないこと、食後に血糖値が急上昇する血糖スパイクを防ぐことが大事。3食のうち1食は炭水化物を抜くくらいでいいと思う」

がんやアルツハイマーも

 ところで、タンパク質に入り込んだAGEが体の機能を劣化させることには触れたが、実はそれだけではなく、牧田院長は、

「もっと直接的に病気を惹き起こす側面があります」

 と言うのである。

「人間の体には、異物が体内に入ると撃退する免疫システムがあり、AGEが発生すると食細胞のマクロファージがこれを貪食します。ところが、マクロファージは食べるときに炎症を起こさせるので、AGEが蓄積した臓器には慢性的な炎症が起きる。最近、この炎症が動脈硬化やがんの一因ではないかという学説も出ています。体内にAGEを多く抱えていると遺伝子エラーが起こりやすく、これががんの発生に深く関わる、と主張する人もいます。人間の細胞は新陳代謝で新しい細胞を作るとき、遺伝子をコピーしますが、糖化が原因でコピーにエラーが発生し、がんが発生しやすくなるというのです」

 牧田院長は、糖尿病患者のがん発症率の高さが、この説を裏づけると説く。実際、日本糖尿病学会と日本癌学会が2013年に発表した、10年間の追跡調査の結果では、糖尿病患者の発症率は糖尿病でない人にくらべ、大腸がんは1・40倍、肝臓がん1・97倍、膵臓がんは1・85倍である。

 また、アルツハイマー型認知症についても、

「この病気の人に認められる老人斑は、アミロイドβというタンパク質が蓄積してできたアミロイド線維です。札幌医大精神科の先生と共同研究したところ、この老人斑に大量のAGEが含まれているとわかりました。メカニズムはまだわかっていませんが、AGEがアミロイドβと結合し、脳細胞に沈着するのではないかと考えています」

 ただし、怖がる必要はないという。

「AGEの多くは、タンパク質が新陳代謝で入れ替わるときに一緒に消える。代謝回転が遅いタンパク質もありますが、たとえば血液中のタンパク質は数分から数カ月で入れ替わる。入れ替わったあと、新たにAGEを溜めなければ、血管がもろく硬くなるのを防げます。意識さえしていれば100歳も夢ではありません」

 100歳まで生きたくない、という人はいても、病気になりたい人はいないだろう。食事のひと工夫で病気を防げれば、それに越したことはないではないか。

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

特集「長生きはしたくなくても『100歳時代の食卓』」より

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