「55億円地面師事件」捜査大詰め フィリピン逃亡犯への「青手配」とは

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「青」と「赤」

 刑事事件に詳しい渥美陽子弁護士が解説するには、

「警察は国内で起きた犯罪の容疑者であっても、国外に逃げられたら逮捕できません。その代わりICPOに国際手配書を申請して、加盟国の協力を仰ぎます」

 国際手配書には小山に用いられた「青」に加え、赤、緑、黄、黒など、合わせて9種類が存在する。たとえば、緑手配はピンクパンサーのような国際窃盗団が加盟国に入国した際の警告に用いられる。また、行方不明者の情報提供を求める時は黄手配、身元不明の死体について通報し、身元を照会するのは黒手配。

 そして、国外に逃亡した容疑者に適用されるのが「青」と「赤」だ。

「青手配は事件に関連する人物の所在地や行動について現地の警察に情報収集を依頼するもの。一方、赤手配は容疑者の引き渡しを前提に身柄の拘束を求めます。ただ、法定刑が最低2年以上の重大犯罪であることなど、赤手配の条件は厳しい。現在、赤手配されている日本人は関東連合の元リーダー・見立真一容疑者をはじめ3人だけです」(同)

 とはいえ、日本とフィリピンは犯罪人引渡条約を結んでいないため、あくまで相手国が自国の国内法で対応することになるが、

「青手配でも、警視庁がフィリピン側に情報提供や捜査に関する“リクエスト”をすることで犯人逮捕に結びつけることは可能です」

 とは、神奈川県警国際捜査課の元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏。

「両国が情報を共有して小山容疑者の居場所が割れれば、オーバーステイを理由に容疑者を強制送還してもらい、飛行機が日本領空に差し掛かったところで逮捕することも考えられる。フィリピンでは入国から1カ月が過ぎてノービザのままだとオーバーステイ。小山容疑者が日本を発ったのは先月13日です」

 地面師事件は、捜査の最終局面を迎えている。

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

ワイド特集「秋風吹いて同床異夢」より

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