スーパー球児「根尾昂」を作った読書 ドクターの父から月20冊

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

骨太な競技生活

 根尾選手の読書術の一端を、スポーツジャーナリストの氏原英明氏が明かす。

「彼との雑談で、学校の休み時間には“本を読んでいることが多い”と聞きました。一流のプロ野球選手がどう一流になったのかが書かれた本や、日本ハムの栗山英樹監督の著書、強いチームや組織の作り方の本が多いと言っていましたね」

 当然、授業の合間だけでは時間が足りないので、

「寝る前の30分とか、寮から学校、学校から練習場へのバスのなか、遠征先の車内で読んでいるそうです。あるインタビューで、大阪桐蔭の西谷浩一監督が“バスで寝ているのを見てホッとした”と言っていました。根尾くんはそれだけ本を読んでいるということです」

 根尾選手の本好きを見てとった氏原氏は、

「中学時代に日本代表でアメリカに行き、メジャーにも興味があると聞いていたので、中島大輔さんの『中南米野球はなぜ強いのか』を渡しました。この本は、世界にどれだけすごいやつらがいて、彼らがどういう練習をしているかが分かります。本を受け取った根尾くんは嬉しそうでした。後日、“自分の知らない世界を知れて勉強になったし、自分がすごく小さいと思いました”。こんな感想を教えてくれましたよ」

 こうした、本から学ぶ姿勢に共感するのは、スポーツジャーナリストの増田明美さん。

「読書は、競技生活を骨太なものにしてくれます。アスリートは練習に追われて実社会での経験が少なくなりがちな分、本から学ぶのが大事です。私も高校の恩師に本を読めと勧められ、けっこう読みました。吉川英治が好きで、『宮本武蔵』が愛読書。武蔵の剣の修行と陸上の修行を重ね、苦しい道を選ぶほうが人間は成長するとの教訓を得ました。それもあって、厳しい現役生活を乗り切れたんです」

 こんな先輩アスリートの声も、スーパー球児はきっと吸収するのだろう。

週刊新潮 2018年11月8日号掲載

ワイド特集「読書の秋の人生譚」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。