カルシウムだけでは不十分! 「骨粗鬆症」を防ぐ最強“乳和食”レシピ

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乳和食レシピ

 如何に日々の食に牛乳を取り込むか――。辿りついた結論は、和食とのコラボだったと小山氏が振り返る。

「カルシウムをとるため、牛乳を使ったレシピはこれまでも多々ありましたが、クリームシチューやパスタなど欧米スタイルのものがほとんど。牛乳の味を前面に出した料理なので、クセが強くて万人向けではないため、飽きずに毎日食べられるものではなかった。牛乳を使った食事は月に1回しか口に入れないのでは意味がありません。そこで、日本人に馴染みのある和食で使うことができないかと思って考案したのが乳和食(にゅうわしょく)です。和食であれば食材には旬の魚や野菜もふんだんに使え、一度の食事で複合的にビタミンをとることができますからね」

 いくら体に良いとはいえミスマッチのようにも思えるが……。見た目も味も、本来の和食と変わりないよう仕上げるのがコツだと、小山氏が話を継ぐ。

「乳和食は毎日続けて食べて貰えるよう、あえて牛乳の味がしないように調理法を工夫しました。従来の料理では、牛乳本来の味を損なわないために加熱し過ぎないのが基本ですが、乳和食は、十分に火を加えることでクセのある味や臭いを取り除くことができます。牛乳と調味料を直接混ぜ合わせることで、牛乳のたんぱく質と水分を分離させる。この過程で牛乳特有の味がなくなってしまうのです。分離しても栄養価が減ることはありません」

 ただし、使用する牛乳は「加工乳」や「低脂肪乳」ではなく、栄養成分が十分に入った「成分無調整」のものがベスト。また、牛乳に熱を加えると焦げつきやすくなるため、セラミック製のフライパンを使うと、調理がし易く、後片付けが楽になることも憶えておきたい。

減塩で骨折予防

 乳和食の効果に注目して、実際に提供している病院や介護施設が年々増えているという。患者からは、牛乳が苦手だから止めて欲しいという声はなく、むしろ牛乳を使っていることに気づかれないことが多いそうだ。しかし、肝心のお味はどうなのだろう。

 再び小山氏に尋ねると、

「牛乳の味が消えるといっても、アミノ酸やミネラルは残りますから、より旨みやコクが出ます。出汁や調味料、水の代わりに牛乳を使うことで、一般的な和食のレシピと比べても塩分が少なく済むのが特徴です」

 元来、健康にいいとされる和食の弱点は、塩分過多になりやすいこと。実は骨にとって、塩分のとり過ぎはよくないとの学説もある。

「アメリカの医学誌には、高血圧の女性はそうでない人と比べて1・45倍も骨折していた、という統計が掲載されています」

 と解説するのは、大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授の森下竜一氏だ。

「これは、高血圧の原因である塩分の過剰摂取が、体内でカルシウムの排出を促進した結果であると考えられます。体内に入った塩分は、ナトリウムイオンに変わって腎臓にある尿細管で再吸収されますが、その過程でカルシウムを尿として排出する交換作用が起こる。そうなると体内のカルシウムが不足してしまい、骨から血液中にカルシウムを動員させようという働きが活発になり、結果として骨粗鬆症になってしまうのです」

 その上で、森下氏はこうも言う。

「日本高血圧学会は1日の平均塩分摂取量は6グラム未満を推奨していますが、日本人の平均値は11グラム。塩分をとりすぎている日々の食事では、1グラムでも減らすのが重要ですから乳和食の取り組みは良いことだと思います。減塩することは骨粗鬆症の予防に繋がりますから」

 前出の石橋氏も、

「減塩できれば、腎臓病や高血圧などの成人病対策にも効果的だと思います」

 と乳和食を薦めるが、高血圧が引き起こす病といえば代表的なものは「心疾患」に「脳卒中」。そこに「がん」を加えれば日本人の三大疾病となる。今年3月、国立がん研究センターは、ビタミンDの不足ががんリスクを高めるとの論文を発表した。骨に欠かせぬ栄養素が「がん対策」にも有効と聞けば、それらを効率よくとれる牛乳と和食の出逢い「乳和食」は、奇跡のコラボといえよう。

週刊新潮 2018年10月25日号掲載

特集「『老化』『早死に』へまっしぐら 『骨粗鬆症』を防ぐ『最強レシピ』」より

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