米倉涼子「リーガルV」は「ドクターX」より長続き? キーワードはチームプレイ

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引き継いじゃった「安っぽさ」

 あれ? ちょと褒めすぎました? いや、「リーV」にだっていろいろ穴はあるのよ。たとえば、テレ朝伝統の「土ワイ」直結な2時間ドラマ的安っぽさは「ドクX」からきっちり受け継がれちゃってます。

 まず、クレジットによれば法律監修が3人に法律指導が1人、ちゃんとついてるのにソッチ方面の設定や用語がユル目。裁判のシーンの冒頭に出るテロップの「第2回公判期日」は「第2回公判」だけで充分だし、痴漢冤罪で検察側に控訴を取り下げさせて法律のプロたちが喜ぶなら「無罪」より「無実」と言うべきだろう。

 主人公の米倉は鉄道オタクって設定で、鉄ちゃんとしての知識と経験が初回の法廷でも勝利の鍵になるくらいだから、鉄道監修も1人、クレジットされているんだけれど、この分野でも疑問あり。依頼者との接見に自信の持てないイソ弁の林が、同行を渋る米倉をエサで釣るための駅弁として「上越線高崎駅のだるま弁当」を挙げるんだけど、それを言うなら「高崎線高崎駅のだるま弁当」ではないかと(高崎では上越線より先に高崎線が開業してます)。

 他にも、1部上場の大手化学メーカーの開発部長が安いノートPC使ってたり、娘が未就学児だったりするのはおかしいし、そのメーカーの最近のスキャンダルを弁護士が「経理不祥事」と呼ぶのもおかしい。平成も末期の1部上場の大手企業なら「会計不祥事」じゃないと、黒い袖カバーを腕にはめた社長の奥さん(専務)が算盤で帳簿つけてる昭和の町工場になっちゃうよ。

 こういう「土ワイ」めいた粗さは脚本にもあって、見ていて「ドクX」のときと同じように特に頭が痛くなるのは、設定や状況の説明を安易にセリフで片付けられすぎるとき。「こちらのエース弁護士としてご活躍のはずですよね?」とか、「確かに京極教授は、法律学教授経験者に対する認定制度で弁護士資格を持ってはいますよ」とか、「先月も一審で敗訴して依頼人の母親まで死なせる結果になってしまって」とか、それ役者に無理なセリフ回しを強要しなくても、映像なり字幕なりでスマートに処理できる情報でしょ。

 もひとつ、演出、というより役者の見せ方にも、大ヒット連ドラの続編ならぬ安っぽさがつきまとう。敵役の大手法律事務所で稼ぎ頭の弁護士であるはずの向井理(36)が、かなり頻繁に(速水)もこみち(34)そっくりに映るわ、腹を立ててる勝村政信が阿部祐二(60:今は「スッキリ」や「ワイドナショー」のリポーター)に見えるのは、いちいち興冷めです。

 とはいえ、このあたりはもう、つけても仕方のないイチャモン。テレ朝・木9の米倉・オスカーものを楽しもうと思うなら、細部に宿っているのは神でないと信じきれる強くて鈍い心、あるいは高度な鈍感力が欠かせません。

 たとえ大手事務所の美人秘書か何かの菜々緒(29)が相変わらず、身ぶり口ぶりの一々でアナタの注意をストーリーの流れから彼女自身(の資質に対する疑問)へとそらしてくれるとしても、責任は彼女ではなくキャスティング担当者にあることと思い出し、意識を筋立てに戻しましょう(今、このくだりを書くために資料を確認したら、菜々緒の役どころは秘書でも受付嬢でもなく、弁護士だったとのこと。訂正のうえ、唖然とします)。

 元弁護士の米倉涼子43歳が外科医時代と変わらず、ボディーラインを強調するファッションに身を包み続けていることに納得がいかないアナタには、吉報さえあります。同じような問題意識は制作側、そして米倉自身も共有しているようで、「リーV」の第1話には米倉が25歳だと偽ってキャバクラの面接に臨み、あっけなく、かつ、すげなく追い返されるというギャグが、ちゃんときちんと盛り込まれてました。

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